テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あれから百年以上経った。
石が積まれた脚に子宮のような胴体と腕、顔の部分はアワビに似ている。
この身体で呪霊として過ごしている時間は、前世も含めた人間の頃よりも長いだろう。
才能の無い呪霊なりには、努力したと我ながら思う。
とはいっても、特級呪霊のような強さにはまだまだ届かない。
羂索が呪術師を乗っ取って御三家や上層部と接触する際は、羂索と一時的に離れたときもあった。
羂索の計画を手伝おうだなんて微塵も思わないが、基本的には羂索と共に行動している。
_________________________________________________
2018年
「わざわざ貴重な指一本使ってまで確かめる必要があったかね、宿儺の実力。」
「中途半端な当て馬じゃ意味ないからね。」
とある繁華街の横断歩道で、夏油の肉体を乗っ取った羂索とその支配下におかれてる私、一時的な協力関係を結んだ漏瑚と花御と陀艮が歩く。
「それなりに収穫はあったさ。」
「フンッ、言い訳でないことを祈るぞ。」
「ぶぶぅ〜ぶぅ〜」
「縺輔☆縺悟測縺邇九〒縺吶」
「貴様は喋るでない!何を言ってるか分からんのに内容は頭に流れてきて気色悪いのだ!」
「喋るなは少し言い過ぎでは…」
横断歩道を渡った先にある、いたって普通のファミレスに入った。
私がファミレスに行くのは前世ぶりだ。
「1名様のご案内でよろしいですか?」
「はい、1名です。」
5名様なことに分からない非術師の店員に、羂索は人差し指を立てて答える。
ただ、案内されたのはカウンター席が埋まっていたからなのか、4人用のテーブル席だった。
私の膝の上に陀艮を乗せて席に座る。
当の陀艮は石が積まれた形状の膝なんかよりも、花御の膝に座りたさそうだったが。
「つまり君達のボスは、今の人間と呪霊の立場を逆転させたいと。そういうわけだね?」
ボスというのは真人の事だろう。
今の時点では漏瑚が1番強いが、今後の成長性を考慮し真人をリーダーに推薦したとのこと。
とはいっても、呪霊組に上下関係のようなものは感じない。
「少し違う、人間は嘘でできている。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。だが負の感情、憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれた我々こそ、真に純粋な本物の人間なのだ。偽物は、消えて然るべき。」
漏瑚の頭の炎が少し燃え音を立てる。
私も呪霊とはいえ、生前と前世の記憶を持っている。
そのため、人間だった頃からの正の感情や行動だって今でも行うしそれには裏があるだろう。
人間だったときと全く同じ意思を持っている私も漏瑚の言う偽物側に入るのかもしれない。
「…現状、消されるのは君達だ。」
1000年生きてるこの人は、ロン毛袈裟の状態でファミレスに入って傍から見れば1人で喋るという奇行に羞恥なんて感じなくなっているのだろう。
「だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?」
「戦争の前に2つ条件を満たせれば勝てるよ。」
羂索が2本指を立てウインクした。可愛い。
「五条悟を戦闘不能にし、両面宿儺…虎杖悠仁を仲間に引き込む。」
「死んだのだろう?虎杖というガキは。」
「さあ…どうかな。」
「五条悟…やはり我々が束になっても殺せんか。」
「ヒラヒラ逃げられるか、最悪君達全員が祓われる。」
「無下限に六眼、両方持っていますからね。」
「殺すより封印するに心血を注ぐことをオススメするよ。」
「封印?その手立ては?」
「特級呪物、獄門疆を使う。」
「サイコロみたいなやつですか。」
「獄門疆…?持っているのか!あの忌み物を!!」
漏瑚の頭の炎が噴火したかのように強くなる。
「漏瑚、興奮するな。暑くなる。」
「お客様ご注文はお決まりですか?」
店員が注文を急かすために来た。
この後の展開を思い出した私は帳を下ろして守ろうかと思ったが、その頃にはもう遅く店員の身体が燃えていた。
「きゃああああああああああ!」
その様子に周りの客や他の店員が悲鳴をあげた。
「あまり騒ぎを起こさないでほしいな。」
「これでいいだろう。」
店内にいる非術師に全員火がつき焼け焦げる。
「高い店にしなくて良かったよ。」
「夏油、儂は宿儺の指何本分の強さだ?」
「甘く見積もって8、9本分ってとこかな。」
「十分。獄門疆を儂にくれ!蒐集に加える。その代わり、五条悟は儂が殺す。」
燃え盛る店の中、漏瑚は黒い歯でニヤリと笑みを浮かべた。