私たちは王城内の広い花園を歩いていた。
冷たい風が気持ちいい。
ここでは二人っきりだ。
「静かですね」
私は隣で歩く彼に話しかける。
「ああ、そうだな。会場はあんなにうるさかったのに」
はは、と私は苦笑した。
ふと見上げると、満天の星が広がっていた。
それは宝石のようにきらきらと輝いている。
その中に、月が浮かんでいた。満月である。
「月が綺麗ですね」
すると彼は目を見開いた。
「どうしたのです?」
「……何でもない」
彼はかぶりを振る。
それならいいんですけど、と私は再びゆっくりと歩みを進めた。
……こんな時間がずっと続けばいいのに、なんて思った。
「リリアーナ」
立ち止まっている彼が私を呼び止める。
「はい」
私は彼の方を振り向いた。
すると、彼がカツカツと足音をさせながら私に歩み寄ってくる。
何だろう?と私が首を傾げていると、彼は私の目の前にきた。
そして手を差し出す。
すると一輪の芍薬が出てきた。
「まあ」
きれい、と感嘆が漏れる。
すると、その芍薬が花束になった。
「デビュタントおめでとう。受け取ってくれ」
私は驚いて目を見開く。
私はそれを受け取った。
私は花束を自分の鼻に近づける。
すると、甘い香りが鼻孔を擽った。
「ありがとうございます」
私は彼に微笑む。
とても綺麗な花束だ。淡い色で纏められていてかわいい。
そのまま私が花の香りを堪能していると、彼は私の花束を持つ手を自分の手で包んだ。
それは優しく、まるで大切な物を包むよう。
私は目を見開いて、彼を凝視する。
「ルウィルク様?」
彼はいつにもまして真剣な表情をしていた。
私は首を傾げる。
すると彼は、意を決したように口を開いた。
「リリアーナ。お前が好きだ。俺と交際してくれ」
私は、彼のその形のいい唇から出た言葉が、一瞬理解できなかった。
私の目がゆっくりと見開かれていく。
え、……嘘。夢?
……いや、夢じゃない。彼の手の温もりがちゃんと伝わっているから。
私は、彼の瞳をじっと見つめた。
深海を掬い取ったかのような、綺麗な瞳。そこに偽りの色はなかった。
……私も言わなきゃ。
私はすっかり赤くなり、必死に口を動かす。
「わ、私もルウィルク様をお慕いしております。だっ、だから、よろしくお願いします」
……言えた。良かった。
安心しながらふと彼を見ると、彼は目を見開いていた。
と、彼の白い顔が近づいて来る。
え、と私は固まった。
すると額にやわらかいものを感じる。
口づけられたのだと遅れて理解した。
続けてこめかみ、頬に口づけが降ってくる。
私が目を見開いて固まっていると、唇にもやわらかい感触がした。それはかすめるようなものだったけれど、確かに感じた。
すっかり真っ赤になって唇を押さえる私に、彼は淡く笑う。
「ありがとう」
「は……い」
そうして私と彼は恋人になったのだった。
コメント
4件
なんか…展開早い?笑