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刻の碧律

76 - 第17話:「タムジェン、導きの光」

2025年04月08日

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第17話:「タムジェン、導きの光」



🚷 シーン1:集落に集う影たち


夕暮れの星峰特区、山間の静かな集落。空気は凍るように冷たいが、村の中心には人々が集まり、焚き火の灯りに照らされていた。ナヴィスはその様子をカメラに収めながら、フードを被ったまま静かに歩を進める。


「……ジャムツァ、そろそろだ。」


ナヴィスの隣を歩くゼインは戦闘スーツに身を包み、手には折りたたみ式の短剣が装着されている。無表情のまま辺りを見渡す彼に、すずかAIの声が静かに届く。


「ゼイン、周囲に武装の反応なし。この集会は“正式な儀式”のようです。危険は低いでしょう。」


その言葉に、ゼインは短く頷いた。


🚷 シーン2:語られる預言


壇上に立ったジャムツァは、緑の僧衣に身を包み、額の碧紋が焚き火の揺らめきに照らされていた。その背は高く、しなやかな筋肉を感じさせる体に、長く束ねた黒髪が流れる。彼の瞳はまっすぐ民衆を見据え、深い碧色の輝きを湛えていた。


「……我らが求めたのは、“人間の檻”からの解放ではない。カムリンは生きるために碧族となった。だが、赫軍兵団は我らを“兵器”としか見ていない!」


集まったカムリン族たちがざわめく中、ジャムツァの声は堂々と響く。


「本当の碧族とは、“在る”者だ。自然と共に、命を継ぐ者だ。我はその始まりを指し示す者、タムジェン——導き手である!」


その瞬間、焚き火が突然青白く燃え上がり、周囲の碧族たちの碧素が微かに共鳴する。ナヴィスが息を呑みながら、ジャムツァの様子を見つめた。


「すずか、いまの共鳴、自然発生か?」


「確認中……。いいえ、周囲の碧族たちが無意識に反応しているようです。これは“信仰的共振”とみられます。」


ゼインが小さく唸る。


「……あいつ、本当に“神輿”に乗る気か?」


ナヴィスは真剣な表情でつぶやいた。


「乗るさ。今の彼なら“カムリンを救う象徴”になれる。」


🚷 シーン3:反響


群衆の中からひとりの若い碧族が手を上げた。


「……我らの中で、誰が人間に抗える? 赫軍兵団には、我らの力では敵わない!」


その言葉に、ジャムツァは静かに頷き、右手を天に掲げる。


「ならば、共に在れ。《ヴォイド・エコー》!」


彼の掌から碧白いフラクタルが広がり、周囲の碧族たちの碧素が微かに共鳴、光を帯びていく。


すずかAIがすぐに分析する。


「碧素の干渉率が上昇。周囲の碧族の能力が一時的に増幅されています。」


ナヴィスが静かに頷く。


「それが、彼の力だ。“一人で戦う”んじゃない、“共鳴で導く”タイプなんだ。」


🚷 シーン4:その夜の誓い


集落の祭壇には、新たに刻まれた文字があった。


「碧なる者、導きを知れ。タムジェン、此処に現る」


ジャムツァは一人静かに、遠くを見つめていた。彼の背に立つナヴィスが声をかける。


「……思ったより似合ってるぜ、導き手。」


「導き手は孤独だぞ、ナヴィス。」


「なら、俺たちが横にいる。孤独にはさせないさ。」


微笑むジャムツァの瞳に、一瞬だけ迷いがよぎった——だがすぐに、それは碧色の光に溶けていった。

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