コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第17話:「タムジェン、導きの光」
🚷 シーン1:集落に集う影たち
夕暮れの星峰特区、山間の静かな集落。空気は凍るように冷たいが、村の中心には人々が集まり、焚き火の灯りに照らされていた。ナヴィスはその様子をカメラに収めながら、フードを被ったまま静かに歩を進める。
「……ジャムツァ、そろそろだ。」
ナヴィスの隣を歩くゼインは黒の戦闘スーツに身を包み、手には折りたたみ式の短剣が装着されている。無表情のまま辺りを見渡す彼に、すずかAIの声が静かに届く。
「ゼイン、周囲に武装の反応なし。この集会は“正式な儀式”のようです。危険は低いでしょう。」
その言葉に、ゼインは短く頷いた。
🚷 シーン2:語られる預言
壇上に立ったジャムツァは、黒と金の僧衣に身を包み、額の碧紋が焚き火の揺らめきに照らされていた。その背は高く、しなやかな筋肉を感じさせる体に、長く束ねた黒髪が流れる。彼の瞳はまっすぐ民衆を見据え、深い碧色の輝きを湛えていた。
「……我らが求めたのは、“人間の檻”からの解放ではない。カムリンは生きるために碧族となった。だが、赫軍兵団は我らを“兵器”としか見ていない!」
集まったカムリン族たちがざわめく中、ジャムツァの声は堂々と響く。
「本当の碧族とは、“在る”者だ。自然と共に、命を継ぐ者だ。我はその始まりを指し示す者、タムジェン——導き手である!」
その瞬間、焚き火が突然青白く燃え上がり、周囲の碧族たちの碧素が微かに共鳴する。ナヴィスが息を呑みながら、ジャムツァの様子を見つめた。
「すずか、いまの共鳴、自然発生か?」
「確認中……。いいえ、周囲の碧族たちが無意識に反応しているようです。これは“信仰的共振”とみられます。」
ゼインが小さく唸る。
「……あいつ、本当に“神輿”に乗る気か?」
ナヴィスは真剣な表情でつぶやいた。
「乗るさ。今の彼なら“カムリンを救う象徴”になれる。」
🚷 シーン3:反響
群衆の中からひとりの若い碧族が手を上げた。
「……我らの中で、誰が人間に抗える? 赫軍兵団には、我らの力では敵わない!」
その言葉に、ジャムツァは静かに頷き、右手を天に掲げる。
「ならば、共に在れ。《ヴォイド・エコー》!」
彼の掌から青白いフラクタルが広がり、周囲の碧族たちの碧素が微かに共鳴、光を帯びていく。
すずかAIがすぐに分析する。
「碧素の干渉率が上昇。周囲の碧族の能力が一時的に増幅されています。」
ナヴィスが静かに頷く。
「それが、彼の力だ。“一人で戦う”んじゃない、“共鳴で導く”タイプなんだ。」
🚷 シーン4:その夜の誓い
集落の祭壇には、新たに刻まれた文字があった。
「碧なる者、導きを知れ。タムジェン、此処に現る」
ジャムツァは一人静かに、遠くを見つめていた。彼の背に立つナヴィスが声をかける。
「……思ったより似合ってるぜ、導き手。」
「導き手は孤独だぞ、ナヴィス。」
「なら、俺たちが横にいる。孤独にはさせないさ。」
微笑むジャムツァの瞳に、一瞬だけ迷いがよぎった——だがすぐに、それは碧色の光に溶けていった。