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ひより
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#大人ロマンス
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「詳しい話を聞かせてもらえますか?」
四人は警察の事情聴取を受けることになり、これまで亜佑美の身に起きていたストーカー被害を中心に手紙や写真についても全て話していく。
そして後日改めて話をすることで帰宅出来ることになり、朝陽の部屋へ戻って行った。
「……はぁ……マジありえねぇ……」
「だけど誰も怪我をしなかったことは良かったよな」
「だな……」
ソファーにもたれるように座った陽向はその横に立つ界人と会話を交わす中、身体の震えが止まらない亜佑美は朝陽に支えられて寝室のベッドに腰を下ろした。
「大丈夫ですか? ここは安全ですから、ね?」
その横に座った朝陽は亜佑美の身体を抱き寄せると、もう大丈夫であることを伝えて落ち着かせようとする。
「……あの人、……私、本当に知らないの……」
亜佑美はあの男のことを全く知らなかった。
それなのに敵意を向けられて殺されかけたのだ。
未だにその事実が飲み込めずに戸惑う亜佑美に朝陽は、
「分かってます。亜佑美さんは何も悪くない。あの男が勝手に好意を寄せて、その想いを拗らせただけですから」
ひたすら亜佑美は何も悪くないことを伝えていった。
あれから日を改め、四人は再び警察で事情聴取を受けることになった。
そこで明らかになったのは、これまで亜佑美にストーカー行為を繰り返していたのが今回捕まった男本人だったということだった。
男は村神 幸也、三十八歳。
村神が亜佑美を初めて見かけたのは、偶然利用した駅だった。
一目見た瞬間から気になり、その後何度か同じ電車に乗り合わせるうちに村神は亜佑美へ強い感情を抱くようになっていった。
けれど話し掛ける勇気はなく、ただ毎日亜佑美が利用する時間に合わせて電車に乗り、その姿を遠くから見つめるだけ。
そんな日々を過ごしていたある日、村神は亜佑美が朝陽と一緒にいるところを目撃する。
彼氏がいるのだと知った村神は一度は諦めようとした。
しかし、忘れようとすればするほど亜佑美のことが頭から離れず、抑えきれなくなった感情はストーカー行為へと変わっていった。
さらに、亜佑美の周囲に陽向や界人まで姿を見せるようになると村神は次第に歪んだ思い込みを募らせていく。
自分以外の男と親しげにしている亜佑美を見て、「男に媚を売っている、男なら誰でもいいのか? それなのに俺には……」と勝手に決めつけ、次第に好意は憎悪へと変わっていった。
そして嫌がらせを繰り返すうちに村神の感情はさらにエスカレート。
「自分のものにならないのなら、いっそ殺してしまいたい」
そう考えるまでになり、ついには亜佑美たちを襲撃した――それが村神が警察で語った一連の経緯だった。
男が逮捕されてこれ以上狙われる心配がなくなったことは幸いだったけれど、事件が解決したからといってすぐに以前の生活へ戻れるわけではない。
今回のことで亜佑美はすっかり怯えてしまい、外へ出ることを怖がるようになり、その結果仕事も暫く休むことになった。
そんな亜佑美を一人にしておくのが心配だと、朝陽も数日間有給休暇を取ることにして二人で過ごすことに。
亜佑美は申し訳なさそうに俯きながら隣に座る朝陽へ声をかけた。
「……ごめんね。朝陽くんまで休むことになって……」
「いいんですよ。気にしないでください」
朝陽は穏やかに笑うけれど、その表情の奥にはまだ事件への警戒が残っていた。
亜佑美が無事だったことに安堵している一方で、彼女を一人にすることへの不安も消えてはいない。
「ストーカーも捕まったし……そろそろ、アパートに帰らないとね」
「……そのことなんですけど、亜佑美さんが良ければ、同棲しませんか?」
「……え?」
思いがけない言葉に亜佑美は目を丸くした。
「新しく部屋を借りて一緒に」
「え、でも……」
「今回のことで、俺、亜佑美さんを一人にするのも離れているのも不安なんです」
「朝陽くん……」
「もちろんストーカーは捕まったのでもう大丈夫だとは思います。でも……近くにいれば何かあったらすぐに守れるし俺自身も安心できますから」
それは亜佑美を束縛したいからでも過剰に心配しているからでもない。
ただ大切な人をもう怖い目に遭わせたくない気持ちから来ている言葉だと亜佑美には分かっていた。
コメント
1件
読み終えました。ストーカーの男・村神の内面が明かされることで、単なる「こわい人」じゃなくて「拗らせた一方通行の感情の末路」として描かれていたのが印象的でした。朝陽の「同棲しよう」の提案、タイミングとしては重いけれど、それだけ亜佑美を守りたいんだなって伝わってきてぐっときました。亜佑美の「ごめんね」に罪悪感が滲むのも切ない…。二人がどんな距離感を見つけるのか、続きが気になります。