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 「………はい?」

 僕はウェルの気持ちを無視して物置部屋に入った。

 舌打ちをするほどイラついていたウェルに流石にこれ以上はまずいと思い本性を表す。

 そんな僕にウェルは困惑をしていた。

 当然の反応だな。物心ついてない子供がこんなハキハキと話したら誰だってこんな反応をする。

 でも、僕には時間がない。

 早く母上の所へ向かわなければいけないし、今日は要件だけ伝えにきただけ。

 ウェルも早くこの状況を終わらせたいだろうし早く要件を済ませてしまおう。

「驚かせてすまない。念のため先に言っておくけど、ここでの会話は僕とウェルの秘密で頼む。……今まで隠してきたのが意味がなくなるからね」

「………隠してきた……ですか?」

「ああ」

 ウェルは困惑から緊張した表情となる。

 あまり長居はできない。要件だけ言って早く去ろう。

「まず、用件だけ先に言うと、ウェルには僕の専属になってもらいたいんだ」

「?!お……いえ、私にですか……何故?」

 僕はウェルには要件だけ先に伝えた。まだ困惑気味だが、話は通じそうだ。

「ウェルが最も適任だと思ったからだよ。まじめで責任感があり、優秀と聞いた。だから将来、僕をサポートできる能力を持つ人を探していたんだ。そこで君にお願いしたいと思ったんだ」

「何故私なのですか?もっと適任な人はいると思いますが」

「いや、ウェル以上の適任はいないよ。ウェル……君のここ数日の行動を見ていたけど、君は本当にまじめで責任感が強いと確信を持てた」

「……はあ」

 ウェルは僕に警戒していた。話半分と言ったところだろう。

 今の雰囲気からすると、まだ了承はもらえなさそうだ。

 しょうがない。やり方は汚いが、受け入れてもらうためのネタはある。

 お願い内容は提示した。次は事情の説明。

「僕は無難な生活をしたいんだ。過大評価をされたくない。だから、僕自身が屋敷で自由に行動するために協力をしてもらいたいんだ。このまま普通を演じて無難に生きることを目的にしてたんだけど、事情が変わってね。行動を起こそうと思ったんだ。だけど、僕はあまり目立つ行動はしたくない。そこで協力者が必要なんだ」

「……そんなこと私に言ってよかったのですか?」

「その確認をしている時点で君は吹聴したりしないんじゃない?それに、ほかの人に伝えたとして信じると思うかい?」

「信じないでしょうね」

 僕の説明にウェルは納得してくれたようだ。

 もう理由は話した。あとはウェルの家庭の事情を話して引き受けた方がお得だと思ってもらえる条件の提示。

「もしも、僕の専属になってくれたら今の給料は倍近くになる。そうすればもっと家族に裕福な暮らしをさせられるんじゃないかな?この条件は君にとっても悪くないと思うんだ」

「確かに」

 ウェルは体の弱い母と歳の離れた妹がいる。少しでも楽な生活をさせたいならば僕からの提案は好条件。

 ウェルの家族の事情を利用するのは流石に卑怯かと思ったけど、今回は許して欲しい。

 僕自身も本性晒したからここで断られては困る。

「……少し、考える時間をいただけないでしょうか」

「一週間でいいかな?」

「それで大丈夫です」

「わかったよ。来週来るから、その時に返事してほしい」

「…わかりました」

 何か思うことがあるのだろうか?

 ウェルは考える時間が欲しいと言った。

 僕は別に返事を急いでいるわけではないため、その場で了承。そのまま母上がいる客間へと向かった。

実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と呼ばれた悪役令嬢は重度のあがり症だった〜

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