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オクトクラーケンを討伐した後、ジュンパクはすぐ近くにあった小さな島に船を停泊させ、乗組員全員が協力し荷物を船から降ろし始めている。
「ここら辺でいいかな〜?」
「へいキャプテン!」
俺もアンナさんも檻にまた入れられて荷物の様に運ばれジュンパクの決めた場所に置かれた。
「ねぇねぇお姉ちゃん!どうだった?すごかったでしょ!」
さっきの殺意の高かったジュンパクはどこにいったのやら……
いやまぁ……魔法バトルはいつ見てもすごいよ……まじで。
「う、うん!あんな大きな魔物が一瞬で倒されて!すごかった!!」
どちらにしろ機嫌を損ねたら悪い方向に行きそうだからここは媚び売っとこう!
「お姉ちゃん“モンスター”の事を“魔物”って言うんだ?じゃあグリード王国の奴隷かな?」
そういや、みんなモンスターって言ってたな?どう言う区切りだろ?国によって違うって事かな?
「う、うん」
「じゃぁその姿は“天然”なんだ!?すごいすごいすごい!!」
「て、天然?」
「ふふん♪すごいってことだよ〜っと、後でミーの料理を持ってきてあげるね♪」
「う、うん」
俺が返事をするとニコニコしてた顔が一瞬で真顔になりアンナ先輩を向く。
「さて、と、ババァ」
「何よ?」
「最後の切り札が尽きたね?これでもうババァの身体は今夜ミーの部下たちに弄ばれるの確定だけど、今どんな気持ち?ねえどんな気持ち?」
うわ、リアルNDKだ!初めて聞いた!
「……」
アンナ先輩がうつむくのを見て勝ちを確信したジュンパクは嫌味な笑顔を浮かべ出した。
「残念だったねぇ、あの程度のモンスターならミーは何回も狩ってるから対したダメージにはならないよ?それに、仲間を食べられて怒ってる船員達はどうするだろうねぇ……考えただけでもたのしみぃ♪」
なんか、このジュンパクとかいう男の娘幼女、性格悪いんじゃないかと思えてきた……
「…………」
アンナ先輩は口元を隠して啜り泣いている。
「ま、せいぜい気を付けてね、狂わないように♪」
そういってジュンパクは準備に戻って行った。
「アオイ……ねぇ、私」
アンナ先輩が震えてる声で俺に話しかけてくる……そっか、怖いよね……
俺だって男だけどアンナ先輩の状況だとしたらこれからされる事を考えて気が狂ってるかもしれない……
「アンナ先輩……」
「私、ニヤけてない?大丈夫?」
「……へ?」
手で隠していた口元を曝け出すと下からすっげえ、悪い顔してるアンナ先輩が出てきた!
「ニ、ニヤけてますよ……」
「あ、やっぱり?笑うの堪えるのに必死だったのよ、だって笑われずにはいられないじゃない!こんなに騙されてくれるなんて、あぁ、連中の驚いた顔が見てみたいわ、すごくすごく、楽しみ」
やばい!あの二人!似た者同士だったのか!
え?何?まさか同族嫌悪!?
「あんたも悟られない様にしてるのよ?たぶん私の読みでは____」
「____今日の夜までには来るわよ」
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夕暮れ時__
浜辺には巨大なオクトクラーケンの残骸が広がり、その隣では船員たちがキャンプやテントを設営している。
オクトクラーケンを討伐した勝利を祝うように、ちょっとした祭りのような雰囲気を楽しんでいて船員たちは笑顔で語り合い、食事を共にしている。
めっちゃ良い匂いする……
周りの魔物は何か透明なドーム状の壁に遮られ、この中には入れないみたいだ。
確か、前にリンにこんなものがあるって聞いた事あったな、えーっと……あ、そうそう【結界】って奴だろう、へぇ、こんなんなんだ。
そんなこんなお祭り騒ぎの人たちを檻から見ていたら巨大な鉄板に直でオクトクラーケンが乗せられて焼かれ始めた!流石海賊ダイナミック!
それから「せーの!」と掛け声と共に大きなタルがオクトクラーケンの上に投げられそのタルを空中でジュンパクの鎖鎌がバラバラにして中のソースが焼かれているオクトクラーケンにまんべんなくかかっていき、あたり一面に焼けるイカとソースの香ばしい匂いが漂いさらに俺のお腹を刺激する!
「うぐぅ……」
何あれ!めっちゃ食いてぇ!絶対にお酒と合う味がするよ!そんな匂い!
そしてやっぱりきた!お酒!
海賊達はタルのフタを豪快に割ってジョッキでこぼしながら汲み上げ乾杯をして飲み出した!……うにゃぁぁあ!羨ましい!うらやましぃよぉ……。
檻から涎を垂らしながら見てるとジュンパクがお皿に“何か”を乗せてやってくるのが見えた。
「はい!お姉ちゃん約束の料理だよ?」
「え、えーっと」
いや、せめて足を持って来いよ!?なにこれ!?
目の前の“何か”は片手拳サイズのおたまじゃくしみたいな白いウネウネしたものが無数にうごめいている。
「これはね!オクトクラーケンのオスしかない希少な部位から取れる新鮮な精__」
「わかった!それ以上言わなくても解ったよ!」
うげぇぇぇあああ!?
確かにそこは日本でも食べられてるって聞いたことあるけどさ!
「ど、どうやってたべるの?」
「ん?普通にこうやって手で尻尾を掴んで……あむっ」
ジュンパクはオタマジャクシの尻尾を掴むとくねくねと動くソレを口に頬張ってクチャクチャと食べた……うぅ……。
「美味しい♪はいお姉ちゃん!召し上がれ♪」
「い……いただきます」
うぇえ……人差し指と親指で摘むと同じようにクネクネと動く……これ食べんの?やだぁ。
「♪」
ジュンパクはワクテカしながらこっちを見てる……怒らせたらこわいなぁ……
パクっ
……ッ!!
うぎゃぁぁぁぁあ!まじいいいいぃ!!なんじゃこりゃこりゃ!?
か、噛むたびに生臭くて変な味のヌメヌメ白い液体が俺の口の中を侵略していく。
あまりに白い液体が多いので口から少しこぼれて胸の上にたれる。
うぇ、オェ……顔に出すな、顔に出すなよぉ、俺。
ゴクン
薬を飲む時みたいに無理やり喉を通した。
「お、お、お、美味しかったよ♪」
営業スマイル営業スマイル。
「だよね!良かった♪……さーってっと、ババア」
「な、何よ」
「時間だね、服を脱いでもらおうかな?」
「フフフ……」
「何笑ってやがる?これからの事を想像して気が狂ったか?言っとくが今更謝っても__」
「ハハハハハ!そうね、半分正解よ?これからの事を想像すると“楽しみ”でね?私はちょっと特殊な体質で人の魔力には敏感でね?この意味、アンタにわかる?」
「?、いったい何を言って____」
次の瞬間。
凄まじい轟音と共に、結界が割れ、浜辺の砂が巻き上げられる中、何かが衝撃的に落下してくる。
その衝撃で周りのテントも吹き飛ばされた!
「!?!?」
砂埃が晴れ、そこに現れたのは__
「……」
まるで深淵から生まれたかのような全身漆黒の装備に身を包んだ男が立っていた。