テラーノベル
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その頃、犬吠埼病院では昼間だったはずの空が、何の前触れもなく漆黒へと染まり、窓の外は夜よりも深い闇に包まれていた。
患者や看護師、医師たちは突然の異変に騒然となり、廊下には不安げな声が飛び交う。
美月は窓際へ駆け寄り、信じられない光景に目を見開いた。
「な、なに?あの空は?」
忍も空を見上げ、思わず息を呑む。
「なぜ空が急に暗くなったんだ?」
美月は震える声で呟く。
「どうなってるの?」
忍は険しい表情のまま、小さく呟いた。
「新開村で何かあったのか?」
その言葉に、室内の空気がさらに重く沈んだ。
白縫多磨雄は静かに顔を上げ、かすれるような声で呟く。
「銚子・・信愛・・・」
◇ ◇ ◇
東亰都内某所のレコーディングスタジオ。
レコーディングの最中だった小諸哲哉は、突然立ち上がると大きく窓を指差した。
「ちょっと! タマちゃん!」
種松摩耶は苦笑しながら振り返る。
「もう、小諸さん。私の名前はチア──」
言い終える前に、哲哉が慌てた様子で叫ぶ。
「そんな事より!ほら!窓の外!」
摩耶は窓へ視線を向け、その瞬間、言葉を失った。
「は? なにこれ?」
昼間のはずなのに、空は一面真っ黒だった。
「まだ昼だよね?」
誰に聞くでもなく呟く。
「なんでこんなに真っ暗なの?」
哲哉は青ざめた顔で頷く。
「ね?おかしいでしょ?」
異変に気付いた吉次美沙も二人へ近付いた。
「どうしたんですか? 何か騒がしいですね?」
摩耶は窓を指差す。
「美沙さん!空が真っ暗なの!ほら!」
美沙は目を見開く。
「なにこれ? まるで極夜みたい」
小諸は首を横に振る。
「こんなの初めて見た」
誰も理由を説明できない。
摩耶は黒く沈んだ空を見つめながら、小さく呟いた。
「何が起きてるんだろ?」
◇ ◇ ◇
狗頸学園高校職員室。
教員たちは窓の外を見つめ、ざわめき始めていた。
「なんだ?この空は?」
「さっきまで明るかったのに」
皆が慌てふためいていると、高館宗太郎が急いで職員室に入ってくる。
「みなさん!空見ましたか?」
一人の教員が頷く。
「ええ・・・急に暗くなりましたよね」
別の教員も不安そうに呟く。
「なんか不気味ですね」
宗太郎は腕を組み、空を見上げた。
「何なんですかね?この空・・・」
返事はない。
ただ、重苦しい沈黙だけが流れる。
「こんなの初めて見ましたよ」
宗太郎も息を吐く。
「なんか気味悪いですね」
空一体が得体の知れない異変に包まれていた。
◇ ◇ ◇
長野県下伊那郡天虎村。
山々を覆う空もまた、墨を流したような闇に染まっていた。
諏訪部勇は家の前へ飛び出し、空を見上げる。
「なんだこりゃ!?」
家の中から諏訪部美羽が駆け寄ってきた。
「お義父さん!」
不安そうな表情で叫ぶ。
「危ないですから家の中に!」
勇は黒い空から目を離せない。
「何なんだ・・・この空は」
異変に気付いた村人たちも次々と外へ出てくる。
「勇さん無事かい!?」
勇は振り返り、頷いた。
「おお、俺は無事だが・・・
この変な空は何が起きてるんだ?」
村人は首を振る。
「全く分からん」
別の村人が空を見上げたまま肩を震わせる。
「なんだか怖いわ・・・」
住職は静かに手を合わせ、黒く染まった空を見つめた。
「何やら胸騒ぎがします」
そして、ゆっくりと目を閉じる。
「とてつもなく嫌な予感がします」
誰もが同じ空を見上げていた。
日本中を覆う異様な闇は、まるで世界そのものが息を潜めているかのように、不気味な静寂を広げていた。
◇ ◇ ◇
狗頸拘置所独居房。
窓の外を覆う異様な闇に、拘置所全体がざわついていた。
廊下を駆ける看守が慌ただしく叫ぶ。
「直ちに外に向かえ」
「はい! わかりました!」
返事をした看守は足早に駆け去っていく。
命令を出した警察官は舌打ちし、険しい表情を浮かべる。
「ったく・・一体何が起きてるんだ!?」
その頃、独居房の中では、汀ひなたが鉄格子越しに暗く染まった空を静かに見つめていた。
あまりにも不自然な黒い空。
その異様さに、胸の奥がざわつく。
そこへ廊下から刑事の声が響いた。
「汀!」
ひなたはゆっくり振り返る。
「なに? どうかした?」
刑事は真剣な表情で鉄格子の前まで歩み寄る。
「この空はなんだ?」
そして声を潜めるように続けた。
「もしかして天縁教団が何か関係してるのか?」
ひなたは眉をひそめる。
「なんでそう思うの?」
刑事は頷きながら話し始めた。
「先日お前と面会した白縫銚子さんの事を覚えているか?」
「ええ、もちろん・・・それが?」
刑事は重く息を吐いた。
「旦那さんから今し方、警察に通報があってな」
一拍置いて、厳しい表情のまま告げる。
「どうやら教団関係者に銚子さんが誘拐された様だ」
ひなたの表情が凍りつく。
「え!?」
「そこに今、馬場と白縫信愛さんが向かっているそうだ」
ひなたは唇を噛み締めた。
「あいつら・・・」
刑事は窓の外の闇へ視線を移す。
「もしかしてこの異様な空模様──」
そして、ひなたをまっすぐ見据えた。
「お前が面会の時に口にした修理固成と
何か関係してるんじゃないのか?
どうなんだ!これは教団の仕業か?」
ひなたは静かに首を横へ振る。
「分からないわ・・・」
その瞳は黒い空を映していた。
「けど、その可能性はゼロとは言えないわね」
刑事の顔から血の気が引いていく。
「なら今俺たちが暮らしてるこの世界は?」
ひなたは静かに目を閉じ、小さく呟いた。
「無くなっちゃうかもね・・・」
その一言が、冷たい空気となって拘置所の廊下を包み込んだ。
刑事は言葉を失う。
「な、なんて事だ・・・」
ひなたは再び窓の外を見つめる。
あの闇が本当に修理固成の始まりだとするなら、もう誰にも止める術はない。
「黙って運命を受け入れるしかないわね」
刑事は力なく俯いた。
「馬場たちを信じるしかないって事か」
ひなたはゆっくり頷く。
「まぁ・・そうなるわね・・・」
再び静寂が訪れる。
ひなたは目を閉じた。
脳裏に浮かぶのは、たった一人の少女。
白縫信愛。
あの少女なら、この絶望的な状況でも奇跡を起こしてくれる。
そんな根拠のない確信だけが、ひなたの心を支えていた。
(白縫信愛・・・あんたなら
何とかしてくれる・・そう信じてるわよ)
コメント
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×××さん、第298話読みました…! 日本中が一瞬で漆黒に包まれるこの不気味な異変、ゾッとすると同時に、これが「修理固成」の始まりなんだなって鳥肌が立ちました。各地の登場人物たちが同じ空を見上げる演出、すごく説得力があって、世界が本当に終わろうとしてるんだと実感させられました。 特に拘置所のひなたが「無くなっちゃうかもね」と静かに言ったところ、重すぎて息が止まりそうに…。でも最後に「白縫信愛なら何とかしてくれる」って信じてるのが、もう切なくて、でも希望を感じました。 信愛ちゃん、どうかみんなを救ってほしい…!次が気になって仕方ないです🌙
#ボカロ
ありあ
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ありあ
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