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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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育った国とはあまりに違う環境に、ミヒは気重な日々を過ごしていた。


寒さもだが、外を眺めても石塀が目に写るだけで閑散としている。


あの庭は、もうないのだと幾度となく、自分に言い聞かせたことか……。


「母屋はずいぶんとにぎやかね」


屋敷内に、男達の笑い声が響いていた。


敷地には、主人の部屋を置く母屋を中心に、ミヒの住まう棟、侍女達や下男達の住まう棟が点在していた。


建物はどれも小さく、中に入れば天井は低い。


暖まった空気を逃がさないためで、外見がどんなに立派だろうと、房《へや》は必ず狭苦しい。


すべて冬の寒さを考えてのこと。あの屋敷とは、あまりにも違いすぎた。


「はい。お客様がおみえで、宴《うたげ》を……」


パチリと火鉢の炭がはじける。


主人であるチホのいいつけで、屋敷の者はミヒの部屋をことのほか暖めた。


「また母屋に女を詰めさせているのでしょ?」


ミヒは、炭をくべている侍女に問った。


「ミヒ……いえ、ショウ様。ご安心くださいませ。旦那様は、今宵もこちらへお下がりになられます」


来客のたびに、チホは宴を開き、遊び女《め》をはべらせ客をもてなす。


冬は雪のせいで、訪れる客などほとんどいないのに。よほど、特別な商談なのだろう。


ミヒは赤い絹でできた背もたれに、もたれこんで息をつく。


(……床に直接座るなど……考えられられない……。)


この辺りの建物は、石を組んだ基壇《きだん》の上に立っている。


床下に空間を作り、暖めた炭を置いて暖をとる。基壇は石窯のように、熱を充満させる。


その温もりの恩恵を受けようと、この国では、直接床に座り、横になる。


──赤い背もたれも気に障った……。


この国の者は、目に焼き付くような、極彩色の色合わせを好んだ。


垢抜けないにもほどがある。


そして、叫びに近い女の笑い声が――。


母屋は宴もたけなわ。もれてくる賑わいが、ミヒには耳障りで仕方ない。


「ああ、ずいぶんと騒がしい。お前だって、宴のたびに、旦那様に抱かれているんでしょ?」


侍女にミヒは苛立ちをぶちまける。


「旦那様は、また遠出なさるのかしら?特別な宴のようだし」


「さあ、わかりません……」


侍女は口を濁した。


「ふん!どこの屋敷に押し入るか、そんな話ばかりじゃない!お下がり!旦那様に、告げ口するといいわ。きっと喜んでお前を抱いてくださるでしょう」


不機嫌な女主《おんなあるじ》から逃げるように侍女は下がった。

朱(あけ)の花びら

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