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完結したから、次
ちなみじけー続編
R18は無いよ
文句あればコメへ
百合は少しだけ
病状が変わってる
スタート
あちなグロい
「ねぇ夢奈! あたしは今日、お隣の田中さんが『お星様』になるのを見たんだよ〜! 」
星空区、閉鎖9日目。
街はもう、生きている人間の数より「物言わぬ肉」の数の方が多くなっていた。原因はホシグモ菌による住民の大量死。発症すれば、体内から菌が噴出し、人は文字通り内側から弾けて「砕け散る」。前は血を吐くだったらしい。
夢奈の自宅で、坂本るびあは相変わらず誰もいない椅子に向かって、楽しそうに報告を続けていた。
指には、あの銀の輪(実験器具)が赤黒く変色して食い込んでいる。
「るびあさん?……もう、やめよう? お外を見ちゃダメ……」
夢奈のお姉ちゃんは、窓の隙間から見える惨状に震えていた。
かつての住宅街は、菌に侵されて弾けた住民たちの血と肉で、毒々しい紫色に染まっている。
るびあの過去は、こうした「異常」を「日常」として受け入れなければ壊れてしまうほど、孤独で脆いものだった。夢奈という絶対的な支配者を失った今、彼女は自分自身を「夢奈の所有物」として演じ続けることで、かろうじて理性を保っていたんだ。
第二章:無垢な捕食者(あいそらの百合)
同じ頃、夢奈の家の地下室に身を寄せていた、相羽あいかと七虹宙。
外で住民たちが次々と破裂していく音が響く中、二人はまるでお互いしか世界に存在しないかのように、深く重なり合っていた。
「ねぇ、あいか……。あたし、もうすぐお星様になっちゃうのかな。……ねぇ、その前に、あいかの手で壊してほしいの」
宙が、傷ひとつない白い首筋をさらけ出す。
彼女は「自分が誰かのために壊されること」に、抗いがたい快感と救いを見出していた。
「大丈夫だよ、宙。あたしが、宙の全部を食べてあげるから。あたしは、宙を誰にも、菌にさえも渡さないよ〜!」
あいかは、宙の首筋に深く歯を立てた。
記憶はない。けれど、あいかの本能は、理科室でやり残した「完全な独占」を求めていた。
宙の真っ白な肌に、初めて赤黒い「愛の印」が刻まれる。
それは、凄惨な大量死が続く外の世界とは対照的な、閉ざされた空間での美しくも狂った百合の儀式だった。
第三章:屋上の願星(転落の心中)
閉鎖10日目。ついに「最終処理」のサイレンが鳴り響く。
生き残った住民は、もはやお姉ちゃんを含めた数名のみ。
「夢奈が呼んでる! あたしは、あの日言えなかった『愛してる』を言いに行くんだよ〜っ!」
るびあが駆け出したのは、この街で一番高い、夢奈の家の屋上だった。
その後を、宙の手を引いたあいかが追う。
「やめて!! お願いだから、一人にしないで!!」
お姉ちゃんの叫びを置き去りにして、三人は屋上の縁に立った。
眼下に広がるのは、住民たちの死骸で埋め尽くされた、紫色の地獄。
「見て、宙! みんな砕け散って、星になってるよ。……あたしたちも、あの中に行こう?」
「うん……。あいかと一緒なら、どこまでも堕ちていけるね」
あいかと宙は、最後の手を繋ぎ、互いの体温を溶け合わせるように抱き合った。
そして、るびあは銀の輪を高く掲げ、お姉ちゃんを振り返って満面の笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん、あたしは最高に可愛いまま、夢奈のところに行くね〜! バイバイっ!」
「せーのっ!!」
三人の少女は、迷うことなく夜空へと身を投げた。
落下するその瞬間、彼女たちの白い肌は、紫色の月光を浴びて、誰よりも、何よりも美しく輝いた。
ドサッ。
住民たちの死骸が積み重なった地面に、三つの新しい影が加わった。
皮肉にも、大量死の犠牲者たちがクッションとなり、彼女たちの死に顔は、安らかな眠りについているかのように綺麗だった。
終章:消滅と残響
その数分後。
政府の爆縮弾が、星空区の全域を焼き払った。
大量の死体も、少女たちの狂おしい愛も、すべては一瞬の熱量の中で灰へと還る。
「あ……あぁ……っ……!!」
救助ヘリの窓に顔を押し当て、お姉ちゃんは、自分の家が、そして妹の面影が残る街が「クレーター」へと変わる瞬間を見届けるしかなかった。
彼女の指には、るびあが落ちる直前に手すりに残した、あの銀の輪が握られていた。
一ヶ月後。
地図から「星空区」の名は抹消された。
お姉ちゃんは、誰も知らない街で、ひっそりと生きている。
死んでいった彼女たちは、地獄のような街から「心中」という出口を見つけて逃げ切った。
一番不憫なのは、死ぬ勇気もなく、あの日見た「少女たちの笑顔」を一生呪いのように抱えて生きていく、彼女だけだった。
「ねぇ、みんな……あたしだけを置いて、ずるいよ……」
窓の外、かつて星空区があった方向を眺めるお姉ちゃんの瞳には、もう、涙さえ枯れ果てていた。
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