テラーノベル
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アルフレッド
「……。……。……。」
エルナ
(……沈黙が長いわね。毒見役の騎士たちまで、石みたいに固まってるし)
エルナ
「あの……公爵様? お口に合いませんでしたか?」
アルフレッド
「……いや。……これに、何を入れた」
エルナ
「えっ? ですから、タマネギと鶏ガラと、ほんの少しの『聖なる祈り(浄化魔法)』を……」
アルフレッド
(ガタッ! と椅子を鳴らして立ち上がる)
騎士A
「公爵閣下!?」
アルフレッド
(エルナの目の前まで詰め寄る。顔が近い)
エルナ
(ひっ、怒らせた!? 前世のトラウマが……!)
アルフレッド
「……私の『魔力暴走』が、止まった。……この一杯でだ」
エルナ
「え? ああ、そういえば公爵様は呪いで魔力が不安定だって噂でしたっけ」
アルフレッド
「噂どころではない。数多の魔導師が匙を投げた呪いだぞ。それを……料理のついでに治したというのか?」
エルナ
(……あ、やばい。目立ちたくなかったのに、聖女パワー全開で煮込んじゃったわ)
エルナ
「あ、ハハハ……。たまたまですよ! 隠し味のスパイスが効いたのかも?」
アルフレッド
「…………。」
アルフレッド
(スッと目を逸らし、耳まで赤くなる)
アルフレッド
「……その、なんだ。……もう一杯、あるか?」
エルナ
(……えっ、今『おかわり』って言った!?)
エルナ
(あの『氷の死神』が、赤くなってお皿を差し出してる……。……何これ、ちょっと可愛いじゃない)
エルナ
「ふふっ。残念ながら、お鍋はもう空っぽです。……でも」
エルナ
「明日も作ってあげましょうか? 栄養満点の『デミグラスハンバーグ』」
アルフレッド
「……デミ……? いや、そんな得体の知れない料理に釣られるほど、私は安くない」
(翌日:公爵邸のキッチン)
(ジュゥゥーッ! と肉の焼けるいい音)
(アルフレッドが柱の陰からこっそり覗いている)
エルナ
(……めっちゃ見てる。公爵様、朝からずっとあそこで待機してるわね)
(カサッ、と物音がする)
エルナ
「誰ですか!?」
(現れたのは、前世でエルナを裏切った婚約者・第一王子の側近)
王室の使い
「エルナ様。王宮へ戻る準備を。……貴女のような『役立たず』でも、まだ使い道があるようですので」
エルナ
「…………っ!」
(エルナの表情が強張る)
アルフレッド
(柱の陰からゆっくりと姿を現す。周囲に冷たい冷気が漂う)
仙崎ひとみ/九龍
#異世界
アルフレッド
「……おい。私の『料理人』に、勝手に触れるな」
王室の使い
「こ、公爵閣下!? なぜここに……!」
アルフレッド
「彼女は今、私の呪いを解く重要な……『主治医』だ。王宮へ連れ戻すなら、この私を敵に回すと心得よ」
エルナ
(公爵様……。……あ、でも私、今『主治医』じゃなくて『料理人』って言われなかった!?)
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