💙「涼太、この前リップ楽屋に忘れてた」
❤️「あ。俺のだ。失くしたと思ってた。ありがとう」
こんなやりとりひとつで、天にも昇るような気持ちだなんて人に笑われるだろうか。
ゆり組なんて忌まわしい呪縛がなければ、俺はもっと涼太と普通に話ができるのに。
何かとみんなに注目されるから、話しかけることすら普通にできやしない。
スタジアムのリハが始まっている。
セットリストもだいたい固まって、フォーメーションの確認、振り付けの確認。繰り返し繰り返し行う。忙しいのは本番のミスの言い訳にはならない。
なかなかみんなでは揃わないけど、なんとか撮影がない日に参加したら涼太も来ていた。
阿部と涼太が話している。
相変わらず二人は波長が合うらしい。
少し距離を置いてじっと見ていたら、照に声を掛けられた。
💛「翔太、ちょっといい?」
💙「うん」
照に別室へ呼ばれた。
💛「今夜、二人で会える?」
💙「うん」
💛「ちょっとだけ、ぎゅってしてもいい?」
💙「うん」
照がいなきゃ自分を保てない。
でも俺は照のことが好きなんじゃない。
照の熱が伝わる。照は俺のことを好きなんだといつも全身で言っている。
💛「よし。休憩」
照の号令で、短い休憩が始まる。
置いてあったペットボトルの水を飲んだら、涼太が小さく声を上げた。
❤️「それ俺の」
えっ。
思わず赤くなって、ストローが口から外れた。
💙「悪い。どうしよう…」
❤️「いや、別にいいよ」
涼太は俺の手からペットボトルを受け取って、同じストローで水を飲んだ。
💙「……っ!!」
こんなことで動揺するなんて、俺はガキかよ。
照の視線を感じる。
少しまずいかもな、と思う。