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「この前1度だけ遥香に連れて行ってもらったから大丈夫よ」
「仕事が忙しいからって、遥香の事や結婚式の準備とか全て任せっきりにしてしまってスイマセン…」
「私、何もしてないよ。遥香と平井くんの事は全部自分たちでやってもらってる。それより遥香が言ってたけど、紺野くん1度式場に行った事あるんでしょ?」
「あったっけ?」
「あるでしょ? 葵ちゃんと一緒に」
葵と一緒に結婚式場に?
「あっ!?」
「思い出した?」
「えぇ…そういえば結婚式場が将来的に出来るという空地に、葵と2人で見に行った事があったんです…。確か、葵はそこが遥香の結婚式が行われる場所だと言っていました」
しばらくすると、車は市内とは少し離れた場所に入って行った。
あの頃とは違い、田んぼだった場所には色んなお店や会社などが建ち並んでいた。
でも遠くを見渡せば田んぼや自然が、まだ微かに残っていてタクシーの中から見た懐かしい風景が蘇ってきた。
それから更に車を5分くらい走らせていると結婚式場の巨大な大聖堂が見えてきた。
敷地面積もかなり広大で、1,000坪位はありそうだった。
確かに僕は葵とここに来た。
何もない新地を2人で歩き、そこで僕らはキスをした。
そして未来の映像を見せられた。
葵、君は遥香の誕生日である10月13日の今日、僕たちの前に現れる。
最後のお別れをする為に…。
結婚式場の中に入ると、僕と美咲さんは遥香のいる新婦のメイクルームに向かった。
部屋の中に入って行くと、ウェディングドレスを着た遥香の後ろ姿が僕の目に飛び込んできた。
「パパ…手は大丈夫?」
後ろに手を組んで遥香に気付かれないように近づいたのに、振り向いた遥香の第一声がそれだったので驚いた。
「見えてたんなら教えてくれよ」
「教えても、たぶん同じ事になってたと思う」
変えられない未来もあるってヤツか…。
「それより、遥香おめでとう。とっても綺麗だよ」
「パパ、ありがとう。どぉ? ママよりも綺麗?」
「残念だけど、ママよりも綺麗だ」
ドレスを身にまとい、キレイにメイクを施された遥香は、普段の美しさに更に磨きがかかっていた。
さすがは母親譲りの美人だ。
「よしっ」
遥香は喜びの余り、足を広げてガッツポーズをしていた。
「コラッ遥香、そういう事しないの。せっかくのウェディングドレスが台無しよ」
「ゴメンなさい…」
「でも本当に綺麗よ」
「ありがとう…お母さん」