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「古佐くんさ〜、いっつも畑葉さんと居るよね」
僕にキスをしてきた張本人、
畑葉さんは今日欠席だった。
それで少し落ち込んでる僕にクラスメートの一軍女子、
『みっちゃん』こと海琴が話しかけてくる。
海琴は僕と小・中が同じ学校だった。
が、あんまり話したことは無い。
第一、海琴は一軍だけど僕なんて三軍だから話す機会なんて早々無い。
「まぁ、」
「なんで?好きなの?」
随分攻めた質問してくるな…
「全然?」
「しかもいっつも放課後2人でどっか行ってるよね」
「どこ行ってんの?」
なんでこんなに探ってくるのだろうか。
もしかしてあの卵焼き事件で僕ら目つけられてるとか?
「遊びだよ遊び───」
「もっと具体的に言って」
これ答えたら噂ならない?
でも言わなかったら何されるか分からないし…
そう『言う』か『言わない』か躊躇って何も言わないでいると
「畑葉さんがどうなってもいいの?」
とまさかの脅しのような言葉が飛んできた。
「え?」
と僕が声を零せば、追い討ちのように
「虐めるよ?」
とまさかの爆弾発言。
海琴がそんなことをする人だとは思えないけど、万が一が怖い。
だから僕には真実を言う選択肢しか無かった。
「花かんむり作ったりお花見したりだよ…」
僕がそう正直に答えたのにも関わらず海琴は『ふーん』と声を漏らすだけだった。
「今日はなんかあるの?」
案外しつこいなと思いながらも
「テス勉」
と答えてしまう。
「どこで?」
「外」
「外?!ウケる」
そう言いながら海琴は大笑いする。
「ね、それ私も行っていい?」
僕はいいけど畑葉さんはどうなのかな…
そう答えを迷っていると
「何も答えないってことはいいってことだよね?」
そう勝手に決めつけ、
しかも何故か僕のスマホを奪う。
「え、ちょっ!返して!!」
「畑葉さんの連絡先持ってないんだ?ダッさ」
そう言い、悪そうに笑う。
というか普通に傷つくんですけど…
「しょうがないから、はい」
そう言って僕にスマホを返す。
画面を見ると連絡先に海琴の連絡先が増えていた。
「可哀想だから私の連絡先あげただけだからね!!」
「別に好きとかそういうんじゃないから勘違いしないでよね!」
そう捨て台詞のように言い放った後、
海琴は自身の席へと帰って行った。
授業が終わり、
放課後の時間が始まると同時に海琴は僕の席に来た。
「さっ、行こ!」
そう言いながら僕の腕を引っ張る。
海琴のグループの人たちが海琴のこと呼んでる気がするけど大丈夫なのかな。
そう思いながらも、
僕はそれを海琴に伝えようとはしなかった。
だってこんなノリノリな海琴見たことないし。
それに、もしかしたら海琴と畑葉さんが仲良くなれるかもって思ってしまったから。
「そういえば今日、畑葉さん休みだったけど本当に今向かってるとこに居るの?」
「んー…どうだろ」
僕だって分からない。
でも、一応行ってみようと思っただけなんだけど…
「何それ」
そんな会話をしながらも、
目的地である大きな桜の木が生えた丘が近づいてくる。
丘に着くとやっぱり誰も居なくて、
ただ大きな桜の木が佇んでるだけだった。
「ほら、言ったじゃん」
「居ないって」
そう少し馬鹿にしながら海琴は言う。
「いや、居るよ」
「え?」
畑葉さんなら、あそこにいる。
僕には分かる。
そんなことを考えながら僕は大きな桜の木の背に近づいた。
すると
「ばぁ!!」
と畑葉さんが僕を驚かせてきた。
「やっぱりここに居た」
僕が呟くようにそう言うと
「なんで分かったの?!」
って逆に畑葉さんが驚く。
「勘」
僕がそう短く言ったと同時に海琴が僕の背の方へ来る。
そしてこんなことを言った。
「やっぱり付き合ってるんじゃないの?」
「だって普通、こんな女子と仲良くならないし?」
「それとも弱み握られてるとか?」
やっぱりここでも爆弾発言。
「え?」
畑葉さんが困惑してる中、
海琴の爆弾発言は続いた。
「畑葉さんって可愛いしね?」
「でも古佐くんは平凡だけど」
「あんまり釣り合わないと思うな〜」
なんかちょくちょく僕の悪口言ってない?
そう思いながらも、
海琴は次の言葉を準備するように口を開ける。
と同時に
「海琴!!もういいから」
と僕が叫んだ。
が、それも間違いだった。
「海琴?」
「あ、そういえば畑葉さんは古佐くんに『畑葉さん』って呼ばれてるんだっけ?」
「でも私は海琴って呼ばれてるんだ〜!!」
「私も琉叶って呼んじゃおうかな〜!!」
そう。
海琴の背押しのようになってしまったのだ。
「羽乃さんは古佐くんと付き合ってるの?」
少し俯きながら畑葉さんはそんなことを聞く。
「違っ──」
「そうだよ?」
「そっか、」
『違う』そう言いたかったのに畑葉さんの顔を見たら、言えなかった。
どちらも傷つけてしまいそうで、
言えなかった。
畑葉さんは少し涙を浮かべながら
「じゃあ今日の約束は中止にしよっか」
なんて言う。
あの後、結局僕らは家に帰った。
畑葉さんは僕と海琴に笑顔を向けながら手を振っていた。
でも、あの笑顔は本物じゃない気がした。
それで海琴は『自分の家で勉強会をしよう』なんて提案をしてきたけど、僕は断った。
あの時、
ちゃんと否定できない自分がなんてちっぽけな奴だろうと、
そんなことを考えていたからであった。