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第十四章 月が導く先
第六話 辿り着いた想い
宿へ戻る頃には月はすっかり高く昇っていた。
夜更けのミルハは静かだった。
遠くから僅かに通りの喧騒が聞こえてくる。
宿屋の一室。
5人はそれぞれ武器や荷物を下ろし、ようやく一息ついた。
「はぁ〜……久々の戦闘やったから、ちょっと緊張したわ」
シュンタがベッドへ倒れ込む。
「何も被害が出なかったのは幸いだな」
ハヤトが静かに頷いた。
だがジュウタロウは、どこか険しい表情のまま窓の外を見ている。
「……満月でもないのに、約三百年間現れていなかった海の魔物が出現した」
低い声。
部屋の空気が少し重くなる。
その中で。
「……俺が、引き寄せてる……」
ジントが小さく呟いた。
ダイチは何も言わなかった。
ただ静かに唇を噛み締める。
誰も否定できなかった。
夜の海で感じた異常な瘴気。
魔物達が一直線にジントへ向かってきたこと。
全てが、嫌な予感へ繋がっていく。
重たい沈黙が部屋を包んだ。
その時だった。
ジントの視線が、ふと窓際にある机の上へ向く。
そこには昼間見つけた木箱が置かれていた。
カーテンの隙間から差し込む月光。
淡い銀色の光を浴びた月の紋章が、静かに浮かび上がって見える。
「…………」
ジントはゆっくり立ち上がった。
まるで何かに呼ばれるように。
静かな足取りで木箱へ近づいていく。
4人も自然とジントを目で追った。
机の上。
箱の傍に置かれたままの鍵。
ジントはそっとそれを手に取る。
冷たい。
まるで長い時間、夜の闇の中に置かれていたような冷たさだった。
胸の奥がざわつく。
懐かしいような。
苦しいような。
言葉にできない感情が込み上げてくる。
次第に鼓動が激しくなる。
ジントは小さく息を飲み込むと、ゆっくり鍵を差し込んだ。
カチ――
やはり、ぴたりとはまる。
部屋は静まり返っていた。
誰一人、言葉を発しない。
ジントは震える指先へそっと力を込める。
すると、
ーーカチャリ。
今度は、あっさりと鍵が回った。
「…………!」
全員が息を呑む。
ジント自身も目を見開いていた。
箱の中から、何か不思議な気配を感じる。
ジントはそっと、震える手を蓋へ伸ばす。
ーーギギっ
軋むような小さな音。
ゆっくりと、箱が開いていく。
4人が自然と机の周りへ集まった。
箱の中に入っていたのは、
一冊の本。
色褪せた茶色い装丁。
ジントは本へ手を伸ばす。
古い革の感触。
ようやく長い眠りから目を覚まし、静かにその時を待っていた重み。
タイトルは書かれていない。
触れた瞬間、胸の奥が熱くなる。
まるで、ずっと探していたものへようやく辿り着いたような感覚。
ジントは深く息を吸い込む。
そして、ゆっくり表紙を開いた。
最初のページ。
そこに書かれていた文字を見た瞬間、ジントの呼吸が止まった。
『この手記を親愛なるルナへ捧ぐ』
『レオル・ウォレッド』
突然脳裏へ、あの少女の姿が浮かぶ。
黒い瞳。
黒い髪。
寂しそうに笑う、小さな少女。
夢でも記憶でもない。
けれど、ずっと心のどこかに居た存在。
ジントの瞳が揺れる。
「……そっか……」
震える声。
「……ルナ……」
ぽろり、と涙が頬を伝った。
「……ルナだったんだ……」
視界が滲む。
胸が苦しい。
懐かしい。
会いたかった。
どうしてそんな感情が湧くのか、自分でも分からなかった。
それでも。
「……やっと……」
涙が零れ落ちる。
「……やっと、見つけた……」
その瞬間。
脳裏の少女が、初めて嬉しそうに笑った気がした。
コメント
3件
え、、!すご、、、、 今まで出てきた女の子の名前知れた、!めっちゃ気になってたからすっきりした!! これからの展開がもう一層楽しみ( ^ω^ ) いきなり敬語なしすみません、、
うわっ……第6話、めっちゃ沁みた……! 海の魔物の出現がジントに引き寄せられてるって流れ、重い空気がずっと続いてたのに、鍵が開いた瞬間から一気に涙腺緩んだわ。箱の中の手記、差出人がレオル・ウォレッドで、宛先がルナ……って、ジントが「ルナだったんだ」って呟くところ、胸がぎゅっとなった。脳裏の少女が初めて嬉しそうに笑った描写、最高にエモい。やっと辿り着いた感、すごく伝わってきた🔥
𝕔𝕠𝕔𝕠
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comi
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