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産婦人科を出た侑と瑠衣は、近くのコインパーキングに駐車してあった愛車に乗り込み、尽天堂大学病院へと走らせた。
「…………院長先生からも連絡してくれると言っていたが、俺からも友人に連絡をしておいた。まずは外来受付で紹介状と書類を提出して欲しい、との事だ」
「…………分かった」
それきり会話が続かず、車内にはエンジン音とFMラジオが道路交通情報を知らせている。
瑠衣はスマホをバックから引っ張り出し、自分の病について調べ始めた。
片っ端からサイトを閲覧し、画面の上を滑る指先が止まらない。
(子宮……病気の進行具合によっては…………もしかしたら……摘出するかもしれないのか…………そうなると……私…………)
車窓から白日光が入り込み、瑠衣はその眩しさに手を翳すも、心の中は暗然としたものが渦巻いたままだ。
侑と何か話さなきゃ、と思うものの、見えない痼のような物が喉を痞え、上手く声が出てこない。
やっとの思いで瑠衣は声を絞り出した。
「きょうの……せん……せ………お医者様のご友人が…………いたん……だね。初めて……知ったよ……」
「…………ああ、医師の友人も小中学校の同級生だ。葉山兄弟同様、俺の数少ない日本での友人の一人だ」
「そうな……ん……だ……」
侑と一緒に暮らし始めて半年以上は経っているのに、まだ彼の事をよく知らない。
侑の性格上、必要な事以外は瑠衣にあまり話さない、というのもあるだろう。
この日初めて知った彼の医師の友人を知った事で、瑠衣の胸中に落ちている影のようなものが、更に色濃くなったような気がしている。
(響野先生は寡黙な所もあるけど…………きっと私に対して……まだ全てを曝け出してないんだろうな……)
そう考えながら瑠衣は曖昧な笑みを浮かべるが、どこか引き攣り気味と思われる表情に、心の奥底では動揺と混乱がない混ぜになっているんだと感じた。
産婦人科を出発して約三十分後。
侑が運転する黒のSUV車が、尽天堂大学病院の広い駐車場へと滑り込む。
思いの外、多くの車が駐車してあり、空いている駐車スペースを探すのに時間が掛かってしまった。
大きな病棟から一番離れた場所に、侑はステアリングを切りながら車を停めると、キーを回してエンジンを止める。
「瑠衣、着いたぞ」
「…………」
シートベルトを外しながら瑠衣に声を掛けるが、彼女は俯き加減で身体を小刻みに震わせている。
「…………瑠衣? どうした?」
しばらくすると、顔を強張らせながら瑠衣が唇を歪め、不自然に笑い始めた。