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小さな肩を微かに震わせながら泣いている瑠衣に、侑は微苦笑しながら声を掛ける。
「…………瑠衣、泣いてるのか?」
「だって…………だって……先生がっ……」
泣き顔を見られたくないのか、瑠衣はまだ両手で顔を隠したまま、くぐもった声音で辿々しく答えると、侑はベージュブラウンの頭をゆっくりと撫でた。
「響野せんっ……せい……が…………こんな私を……大切にしてくれているって……今日…………すごく実感した……からっ……」
「当たり前だ。俺にとって瑠衣は唯一であり、かけがえのない愛おしい存在だ」
アルコールが入っているせいなのだろうか、寡黙な侑が珍しく恥ずかし気もなく瑠衣に気持ちを伝えている事に、彼女は涙を伝わせながらも頬が紅潮していくのを感じていた。
食事を終えた二人は、宿泊するダブルルームの部屋に向かい、大きな窓に映し出されている美しい夜景を眺めていた。
娼館での再会から約一年。
互いに一つ歳を重ね、それぞれ想いを巡らせていると、侑が黙ったまま瑠衣の肩に腕を回しながら抱き寄せてきた。
「瑠衣」
名前を呼ばれ、彼女は覚束ない様子で彼を見上げると、そっと唇を重ねる。
大分痩せ細った彼女の身体を強く抱きしめた後、侑は膝下から掬って抱え上げ、バスルームへと向かう。
「一緒にシャワーを浴びるか」
「…………うん」
「セックスはできなくても、お前の身体の温もりを…………抱きしめながら直接感じたい」
「私も…………入院する前に……先生の温もり……感じたい」
二人は服を脱がし合いながら時折キスを交わし、シャワールームでも唇を求め合った。
その後もベッドの上で一糸纏わぬ姿で二人は抱き合い、互いの存在を確かめ合う。
「お前の病…………二人で一緒に乗り越えていくぞ? 先ほども言ったが、俺は瑠衣を全力で支える。だから…………お前は治療に専念しろ。いいな?」
「…………分かった。あり……がと……う…………響野せんせ……い……」
ウトウトし始めた瑠衣を抱きしめながら、艶やかなボブの髪をそっと撫でる。
(そろそろ……『先生』ではなく、俺の名前を呼んで欲しいものだな……)
侑はフッと小さく笑みを零すと、瑠衣を更に抱き寄せながら眠りに堕ちた。