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精密検査から一週間後、二人は検査結果を聞きに再び尽天堂大学病院へ訪れている。
瑠衣の主治医は侑の同級生、朝岡誠。
侑と瑠衣は丸椅子に腰掛け、朝岡から検査結果を知らされるのを待っている。
「九條さん。検査の結果ですが、子宮頸がんです。他の組織に広がっている浸潤がんと判明しました」
「…………そう……ですか……」
「…………」
瑠衣は悲痛な面持ちで俯き、侑は唇を震わせながらも冷静さを装っている。
その後、朝岡からそのまま入院するよう告げられ、手術の説明を受ける。
「手術は三日後、浸潤がんなので、子宮を摘出します。それから、検査当時は妊娠八週目との事でしたが…………大変申し上げにくいのですが、九條さんの治療を優先するため、赤ちゃんは…………残念ながら諦めていただく事になります」
「…………はい……分かり……まし……た……」
(妊娠した子は、監禁され蹂躙された時にできた子だと思うけど…………これでもう、愛する人……響野先生との子を…………一生宿す事はできない……)
瑠衣自身も分かっていたが、子宮を摘出するという言葉を聞いた瞬間、目の前がフッと真っ暗になった。
朝岡は瑠衣から侑に視線を移し、真剣な面差しを向けた。
「響野。余計なお世話だが、医師として、それから友人として敢えて質問させてもらう。九條さんの治療優先で子宮を摘出する。分かっているとは思うが、二人の間に子どもは望めない。それでもこれから先の人生、彼女を支えていく覚悟はあるか?」
侑は朝岡を見据えるように、視線をかち合わせる。
「ああ、もちろんだ。俺は彼女が生きていてくれれば、それでいい。そのためなら何でもする」
「……分かった」
落ち着き払った声音で言い切った侑の言葉に朝岡は僅かに唇を緩め、再び医師としての表情を浮かばせる。
「ではこれから病室へ移動します。響野、一度帰宅して九條さんの着替えなどの準備をして、ナースステーションへ来てくれないか? 彼女の病室は五階の個室だ」
「分かった。今から家に戻る」
侑が一旦帰宅する事を聞いた瑠衣が、不安げな様子で彼を見やった。
「瑠衣、大丈夫だ。すぐに戻る」
「うん…………気を付けてね」
侑が瑠衣の頭をそっと撫でた後、診察室を後にすると、入れ替わりで看護師が彼女に病室へ案内する。
「九條さん、ご案内しますね」
看護師に促され、瑠衣は侑がいない寂しさを抱えつつ、病室へと向かった。