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あさ、まだおひさまが半分しか空にのぼっていないとき、わたしはちいさなかごと、おばあさんにもらったパンをもって出かけた。
森の入り口は、すこしひんやりしてて、
木の葉のあいだからこぼれる光が、まるできらきらの粉みたいに舞ってた。
「笑顔花さん、どこにいますかー?」
大きな声で呼んでみたけど、鳥さんしか返事をしてくれない。
それでも、わたしはどんどん奥へ歩いていった。
だって、おかあさんの笑顔がほしいから。
しばらく行くと、足もとで何かがぴかっと光った。
しゃがんで見てみると、小さなつぼみが一つ。
まだ咲いていないのに、ほのかに金色に光っている。
「…もしかして、これが…?」
指先でそっと触れたら、あったかくて、
まるで“こんにちは”って言ってくれてるみたいだった。
でも、そのまわりには大きな木の根っこがあって、
どうやら花は根っこのすきまにはさまってる。
わたしのちいさな手じゃ、まだとれそうにない。
「待っててね。絶対に連れて帰るから」
そうつぶやいて、わたしは花の場所を心にしっかり刻んだ。