お嬢様、果報でございます

「全っ然ダメね……」
　愛華の一言で、果報は持っていたティーセットを落としそうになった。
　いつもであれば、コーヒーを飲んだ後に『ありがとう』ぐらいしか言わない愛華が別の言葉を吐いたのだ。
　しかもそれは『ダメ』というネガティブなコメントを内包している。
　果報はぐらつきそうになる自尊心を立て直そうと喉を押さえて軽く咳払いした。
「愛華お嬢様、なにか私の淹れたコーヒーに不備がございましたでしょうか？」
「不備……不備ねえ」
「なんなりと仰ってください。私は愛華お嬢様の望むことならば納得がいく形でご提供をしたいと思っております」
「たかがコーヒー1杯じゃない」
「いえいえ、そんなコーヒーでも一日の始まりに飲むものであれば重要です。美味しいコーヒーを飲んだ後で一日が始まれば楽しい気分にもなりましょう……ですが、一日の始まり＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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