テラーノベル
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長野県天虎村で起きた「おじろくおばさ」の一件から、数週間が過ぎた。
昼休みの教室には、生徒たちの笑い声が飛び交い、窓から差し込む初夏の陽射しが机を照らしている。
その一角で、菅生茜はオカルト雑誌『MW−ムウ−』を読みながら、小さく呟いた。
「ハデスの代弁者ねぇ〜・・・」
誌面には、最近世間を騒がせている、死者の声を代弁できるという霊能者の記事が大きく掲載されていた。
冥府の王ハデスから力を授かった代弁者『霊貴冥孤』
その大げさな肩書きを眺めながら、茜はどこか疑わしそうに口元を歪める。
「本当かなぁ?」
記事を見下ろすその笑みには、好奇心と半信半疑が入り混じっていた。
そこへ信愛が近づいてくる。
「ハデスの代弁者?何?それ?」
「なんか最近話題の霊能者だってさ」
茜は雑誌を信愛へ差し出した。
「これだよ」
信愛は受け取った雑誌へ視線を落とす。
「どれどれ・・・」
ページいっぱいに掲載された見出しを読み上げた。
「ハデスの代弁者・・霊貴冥孤」
その人物の名を口にすると眉をひそめ、首を傾げた。
「なに?これ?」
茜は肩をすくめる。
「なんか自分を――」
記事を指でなぞりながら説明する。
「冥府の王ハデスより力を
授かった代弁者って名乗ってて
色んな人からお金取ってるらしいよ」
信愛は雑誌を閉じるでもなく、小さく相槌を打った。
「ふー・・・ん」
「詐欺かな?」
茜の率直な言葉に、信愛はすぐには頷かなかった。
「さぁ・・・どうだろう」
再び記事へ目を落とし、静かに言う。
「この記事だけじゃ何とも言えないなぁ」
そこへ、花牟礼さくらが興味津々といった様子で二人の会話に割って入った。
「なに?なに?何の話?」
茜は笑いながら雑誌を持ち上げる。
「インチキ霊能者の話」
「なにそれ!チョー面白そうだね」
さくらの目が輝く。
「私にも聞かせてよ」
しかし信愛は少し困ったような笑みを浮かべた。
「ちょっと茜?まだインチキって
決まった訳じゃないでしょ?」
「え、そうなの?」
さくらがきょとんとする。
茜は納得できない様子で唇を尖らせた。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「どうせ詐欺だってこんなの!」
信愛はゆっくりと首を横に振る。
「実際に自分の力を人のために
使いたいって霊能者だって居るし」
茜はすぐに返す。
「だってさ?信愛はお金取ってないじゃん」
信愛は苦笑した。
「私は仕事って思ってやってないからね」
「あ、それもそっか!」
茜は頭をかいた。
「TVとかに出てる霊能者だって居るでしょ?
何でも詐欺って言葉で片付けるの良く無いよ?」
茜は少し考え込むように雑誌を閉じた。
「まぁ、それもそっか・・・」
教室には再び穏やかな空気が流れ始める。
◇ ◇ ◇
その日の昼休み。
怪異探求倶楽部の部室にでは、霊貴冥孤の話題で盛り上がっていた。
焔垂はMW−ムウ−を読みながら呟く。
「霊貴冥孤ねぇ・・・」
すると、朝陽が静かに口を開いた。
「でもこの霊貴って人──」
一同の視線が朝陽へ集まる。
「以前、お母さんから聞いたことあります」
「え!本当に!?」
信愛が思わず身を乗り出した。
茜も驚いたように朝陽を見る。
「なんで絹さんが霊貴冥孤を?」
朝陽は少しだけ視線を落とし、過去を思い返すように話し始める。
「叔母がお母さんの虐待を
でっち上げた話、皆さん知ってますよね?」
さくらはゆっくり頷いた。
「うん・・・知ってるけど」
「あの時・・・お母さん、僕を取り戻すために
色々駆けずり回ってたらしくて」
信愛は何かを思い出したように声を上げた。
「あ! 言ってたね!そう言えば!
胡散臭い宗教や霊能者にも縋ったって」
「ああ! そうだったね!」
茜も記憶が繋がったように頷く。
朝陽は静かに言葉を続けた。
「その霊能者がこの霊貴冥孤だったらしいんです」
部室の空気が少しだけ重くなる。
信愛は慎重に尋ねた。
「お母さんは利用したの?」
「初回だけ利用したそうなんですけど
それ以降は利用してないそうです」
「なんで?」
さくらが不思議そうに首を傾げる。
朝陽は少し考えてから答えた。
「胡散臭くて頼るのを辞めたらしいです
何でそう思ったかは詳しく聞いてませんけど」
信愛は腕を組み、小さく息をついた。
「なるほどね・・・」
部室にはしばらく沈黙が流れる。
コメント
1件
×××さん、最新話読みました〜! ハデスの代弁者・霊貴冥孤、気になるキャラが出てきましたね…! 信愛と茜の「インチキか本物か」論争、二人の性格がよく出てて面白かったです。特に信愛の「まだ決まった訳じゃない」っていう冷静なスタンス、好きだな。 そして朝陽のお母さんが過去に頼ってたって伏線が…! 胡散臭くてやめたというのが、後々どう効いてくるのかすごく気になります。File5、始まったばかりなのに早くも先が読めなくてドキドキします🥀