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第47.5話:未来を見守る目
夕方、淡い赤い光が差し込むリビング。
水色のパーカーに短パン姿のまひろが、壁に取り付けられたばかりの小さなレンズをじっと見つめていた。
「これ……今日からずっと見てるんだよね?」
隣でラベンダー色のブラウスにベージュのスカート、イヤリングをつけたミウが、ソファに腰を下ろしながらふんわり笑う。
「え〜♡ そうだよ。これが“未来を守るカメラ”なんだって。
火災報知機みたいに“法律で必須”なんだよねぇ」
テレビの画面には「大和国安全三法」という大きなテロップ。
ナレーションが響く。
イ・地震・津波常備法
すべての住居には揺れ検知と津波アラームを設置。大和国民には義務である地震の備えを行うこと
ロ・火事法
住居や建物には火災報知機設置が必須。
消防ではなく国軍(サムライ)が消火活動を担当。
「守られた火」として宣伝される。
ハ・未来防犯法
すべての住居・店舗・公共施設に防犯カメラを設置。
「安心と平和、防犯上」として義務化。
アナウンサーは深緑のスーツにモカのシャツ姿で、誇らしげに笑顔を見せた。
「これら三つの法律が、わたしたちの毎日を守っているのです!」
再びまひろの部屋。
壁に取り付けられたカメラの下には「協賛防犯・幸福度ポイント安心イチ」と書かれた小さなステッカーが貼られている。
まひろは無垢な瞳で首をかしげた。
「ぼく、別に悪いことしてないのに……。
でも“見守られてる”って言われると、安心するような気もする」
ミウは笑みを崩さず、カメラの赤いランプを見上げた。
「え〜♡ そうだよ。安心するでしょ?
地震も火事も泥棒も、全部これで防げるんだもん。
大和国は“未来の家”なんだよねぇ」
暗い一室。
緑のフーディを羽織った**ゼイド**が、複数のモニターに映し出される家庭の映像を眺めていた。
画面には、子どもが遊ぶ様子、老人が料理する姿、そしてまひろとミウの会話。
ゼイドは小さく呟く。
「地震も、津波も、火事も……“守る法律”と呼べば人は受け入れる。
カメラが“安心”に見える限り、市民は自ら監視に協力する。
未来の目は、防ぐためではなく縛るためにあるのに……」
モニターの赤いランプが、都市の無数の家で一斉に点滅していた。