「明日からは夏休みだからなー」
「間違って学校来るんじゃねーぞ、閉まってるからな」
「気抜いて髪染めるとかやめろよ」
教室中に先生の声が響く。
気づけばもう夏休みの日になっていたのだ。
夏休み期間は1ヶ月。
明日から8月まで。
クラスメートは喜びの歓声で溢れかえっていた。
「私さー、ずっと疑問に思ってることがあるんだけど…」
いつものように大きな桜の木が生えた丘に向かってる最中にそんなことを呟く畑葉さん。
「なに?」
「スズランって音鳴るの?」
そう言いながら自身のスマホ画面を見せてくる。
映っているのはスズランの花。
「花だから鳴らないと思うけど」
「でも鈴って言うじゃん!!」
「形だけでしょ」
そう僕が言うと『鳴らないんだ…』と呟き声を零しながら落ち込んでしまった。
そういえば春夏秋冬の有名な花ってなんなんだろう。
久しぶりに畑葉さんの花言葉話も聞いてみたい。
しかもスズランの花言葉も気になるな。
そう思い、
「あのさ──」
と僕が話し出したと同時に
「いや、鳴らしてみせるから!!」
と謎宣言。
「え?」
「鳴らないんだったら鳴らせばいいんでしょ!」
「私ってば頭良い〜!!」
そう言いながら1人ではしゃいでいる。
鳴らないものは何しても鳴らない気が…
そもそも花だし…
そう思いながらも
「そういえばスズランの花言葉ってなに?」
「久しぶりに畑葉さんの花言葉話聞きたいな〜って思ってさ」
頬をポリポリとかきながらそう言うと
「もちろん!!」
「スズランの花言葉は───」
「あ、待って」
「せっかく着いたんだし桜の木の下に座って話さない?」
「そうしよ!!」
「それで、スズランの花言葉って?」
「スズランは『純粋』とかだったり『幸せの再来』っていう意味があるんだよ!」
「それで誕生日や結婚式とかの記念日に贈り物として人気なんだ!」
確かに結婚式にはいいかもしれない。
白だし可愛い鈴の形だし。
てかスズランって白以外にも色はあるのだろうか。
「スズランってさ、他の色無いの?」
「あるよ!」
「ピンクとか!!」
ピンク…
「ピンクのスズランの花言葉は『愛らしい』とか『可愛らしい』っていう意味があるみたい!」
そんなことを聞いて『畑葉さんみたい』と思ってしまう。
最近の謎の桜色の件とその花言葉で尚更。
「スズランの花言葉については終わったけど、なんか聞きたいことある?」
「春夏秋冬の花とその花言葉が知りたいな〜って思って…」
「なんかある?」
そう僕が聞くと好奇心旺盛のワンコみたいな目を向けてくる。
多分、僕が花について興味を持ったのが相当嬉しかったのだろう。
「じゃあ春から話すね!」
「春の定番花は『チューリップ』とか『ツツジ』だね!」
そう言われ、『桜』じゃないの?
と思ってしまう。
「あ!古佐くん今、桜じゃないのって思ったでしょ!!」
と図星を突かれる。
「だってニュースとかで見るじゃん」
と反論すると
「もちろん桜も春の定番花だよ?」
「だけどチューリップとかの方が人気だし…」
「歌にもなってるし」
と言ってくる。
「いや桜も歌になってるじゃん」
と反射的に返してしまう。
前に畑葉さんがイヤホンで聞いてたし。
なのに畑葉さんはそんな僕の反射的な呟きを無視して話を続けた。
「それで、チューリップの花言葉は『思いやり』とか『愛の告白』っていう意味があるんだけど…」
「中には『裏切り』とか『私を忘れてください』なんて花言葉もあるんだよね…」
『私を忘れてください』…
やけに畑葉さんを連想させる言葉だ。
なぜなのかは分からないが。
色が違うだけでこんなにも花言葉は違うのか。
そう関心する。
「じゃあ1本では贈り物にしない方がいいってこと?」
「そ!!中々勘が鋭いね」
「チューリップにはさっき言った通り、様々な花言葉があるから複数本で贈る方がいいらしいよ」
新たに知ることが出来て本当に楽しい。
しかも案外、花の話は悪くない。
「次は夏の花だね!」
「夏の花で定番なのは────」
そう話し始めるが、疑問に思うことが1つあった。
そう。
チューリップの花言葉は聞いたけど、
ツツジの花言葉は聞いていない。
後で自分で調べて見ようかな…
そんなことを考えていると
「聞いてる?」
「そっちが話してって言ってきたんじゃん!!」
と少し不機嫌気味な畑葉さんが言う。
「ごめん、聞いてなかった」
そう正直に言うと
「夏の花で定番なのは『向日葵』『紫陽花』『朝顔』だね」
「3つ?」
「うん。まぁ、人気な花っていうことになっちゃうけどね…」
欲張った感じがすごいする。
だけどまたこれもどれか1つの花言葉しか聞けなさそうだな。
1人でそう思う。
が、結果は違った。
「向日葵の花言葉は『情熱』とか『あなただけを見つめる』っていう花言葉で」
「紫陽花は『無常』とか『浮気』」
「朝顔は『約束』『明日も爽やかに』とかの意味があるんだよ!」
と先程と違って全ての花言葉を言う。
なんでツツジだけ言わないんだろ…
単純に忘れただけとかかな。
「秋は『コスモス』と『金木犀』だね!」
金木犀…
あの香りが特徴的な花のことだろうか。
「コスモスは『調和』と『乙女の真心』」
「金木犀は『謙虚』『初恋』などの意味があるんだ!!」
楽しそうに話している畑葉さんを他所に僕は違うことを少し考える。
断じて聞いていない訳では無い。
金木犀…
誰かが何かを言っていたような。
古い懐かしい友人か誰かが…
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