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昼から夜へ、村はどんどんにぎやかになっていった。子どもたちはお面をかぶって走りまわり、
屋台からは甘いパンや焼いたお肉のにおいがただよってくる。
笛や太鼓の音に合わせて、広場の人たちは歌をうたい、
村じゅうがひとつの大きな心になったみたいだった。
わたしは胸のかごを両手で抱きしめながら、
やぐらの前に立っていた。
小さな体だけど、心臓の音は村じゅうに聞こえちゃいそうなくらい。
「さあ、今年の飾りを披露してもらいましょう!」
村長さんの声がひびくと、
みんながいっせいにわっと拍手した。
ひとり目は鍛冶屋のおじさん。
大きな星の鈴を鳴らすと、
澄んだ音が空へ飛んでいった。
ふたり目はパン屋のおばさん。
星の形の大きなパンを持ち上げると、
香ばしいにおいに子どもたちがきゃあきゃあ笑った。
やがて順番がまわってきた。
「次は…ミナ」
わたしは足をすこし震わせながら、
やぐらの階段をのぼった。
そして、かごのふたをゆっくりひらいた。
中には、これまで集めてきた宝物たち。
笑顔花の花びらは、まだやさしい光を放っている。
金色の卵の殻は、夜空に似た星の模様を映している。
小さな紙のお手紙は、ぐにゃぐにゃの字だけど、
見ているだけで胸があたたかくなる。
そして、ひかりのキャンディは、
透明の中に金色の星くずが閉じこめられていた。
「……これが、わたしの宝物です」
わたしの声は小さかったけど、
広場はしんと静まりかえった。
みんなの目が、光るかごの中に吸いこまれていた。
そのとき、空からふわりと一枚の星の粉が落ちてきた。
かごの上に舞いおりて、
小さな光がひとつ、ふくらんでいった。