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「もし、お二人がまだ時間があるんでしたら、お茶しに行きませんか? この辺でお茶すると後を付けられる可能性は高いですし、俺の車がすぐそこのパーキングに停めてあるので、それで行きましょう」
「中崎さん、今日は仕事じゃないの?」
「いや、今日俺はオフで、たまたま所用でこっちに来てたんですよ。用事も済んで、あとは帰るだけなんで」
「そうねぇ。とりあえず、後を付けられている状態で帰るのもアレだし、お茶しに行こうか」
「わかりました」
三人で歩きながら会話していると、拓人の車が駐車してあるパーキングへ到着した。
「帰りはまたここまで送ります。凛華さん、車で来てるんですよね?」
「そうよ。まさにこの駐車場だからビックリ!」
「奇遇ですね。では早速行きましょうか」
黒のセダンの運転席に拓人が乗り込むと、凛華と瑠衣は後部座席のドアを開けた。
「ハハっ……俺、まるでハイヤーの運転手みたいだな」
苦笑しつつも拓人がステアリングを切り、車は滑らかに動き出した。
拓人が連れて来てくれたのは、先日、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツの創業パーティが行われたホテルの一階にあるカフェラウンジ。
三人はブレンドコーヒーを注文し、拓人が会話の口火を切った。
「ところで、誰かに付けられているってさっき言ってましたけど、気付いたのは今日ですか?」
「そうよ。こんな事初めてよ」
「娼館は秘密厳守だから、そのような事は滅多にないと思ってたので、ちょっと驚きました。女風だと、意外とあるんですよね」
「え? そうなんですか?」
瑠衣が思わず聞き返してしまった。
「例えば、セックスレスの主婦の客が性欲を解消するために、女風に通い始める。それを知った客の旦那が妻を尾行している、なんて事は、よくある事です」
拓人が『もっと言えば』と、話を続ける。
「尾行して女風に入っていくのを確認した後、店で待ち伏せして、客と相手をした男性スタッフを、客の旦那がボコボコにする、みたいな」