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#普通
野々さくら
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ありあ
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古びた民家へ足を踏み入れた瞬間、全員が思わず息を呑んだ。
柱は黒ずみ、床板は腐りかけ、壁はところどころ剥がれ落ちている。
長い年月、誰の手も入っていないことは一目で分かった。
まるで時間そのものが止まってしまったような廃墟だった。
龍河は室内を見渡しながら呟く。
「誰かが住んでる雰囲気はねーな」
さくらも辺りを見回し、不安そうに頷く。
「何かいかにも廃墟って感じ」
龍河は慎重に一歩踏み出そうとしたが、足元を見てすぐに足を止めた。
床板はところどころ抜け落ち、踏み場らしい場所がほとんど残っていない。
「うわ、こりゃ無理だ・・
足の踏み場がねー・・」
朝陽は天井を見上げる。
「なんか今にも屋根が崩れ落ちそうな感じですね」
龍河も視線を上げ、小さく息を吐いた。
「ああ、だな・・・」
茜は民家の中をぐるりと見回しながら首を傾げる。
「ここが新開村の跡地なのかな?」
その言葉に、さくらは違和感を口にした。
「でもさ、村って感じじゃなくない?」
少し考えるように続ける。
「村ってもっとこう・・いろんな家がなきゃさ」
龍河も納得したように頷いた。
「だよな・・・」
そう言うと、龍河は民家の外へ出て周囲を見回した。
木々の向こうを注意深く観察していると、一か所だけ草が踏み固められたような細い一本道が森の奥へと続いているのが目に入る。
「あ!こっちに道が続いてるな」
全員がその方向へ視線を向ける。
民家の脇から伸びるその道は、人一人がやっと通れるほどの細さだった。
龍河はその先を見据えながら呟く。
「新開村はこの先か?」
その時、焔垂が何かを見つけたように声を上げた。
「あ!馬場さん!あれ!」
指差す先には一本の黒い標柱が立っている。
近づいてみると、白い案内板にははっきりと二文字が刻まれていた。
『この先新開村』
龍河は静かに頷くき、森の奥へ続く一本道へ目を向ける。
「間違いねーな、新開村はこの先にあるんだ」
信愛は期待と不安が入り混じった表情で尋ねる。
「なら、お母さんはこの先に?」
龍河は迷いなく答えた。
「ああ・・・そういう事だ」
茜は力強く頷く。
「なら行きましょう」
龍河は仲間たちを見回し、真剣な表情で口を開いた。
「ああ・・・」
一拍置き、声を低くする。
「慎重にな」
そして左手の暗い森を指差した。
「左側は崖になってるみてーだから」
信愛は緊張した面持ちで返事をする。
「は、はい・・・」
龍河を先頭に、一行は一列に並んだ。
細い山道の左には深い崖、右には鬱蒼とした森。
足元を確かめながら、一歩ずつ慎重に、新開村へと続く一本道を進み始めた。
◇ ◇ ◇
龍河を先頭に慎重に山道を進んでいた一行は、不意に視界が開ける場所へと辿り着いた。
木々の壁が途切れたその先には、整然と日本家屋が軒を連ねている。
誰かが暮らしていてもおかしくないほど綺麗に残された家々。
龍河は思わず足を止めた。
「こ、ここは・・・」
信愛も目を見開きながら村を見つめる。
「ここが・・・新開村?」
しかし、茜はどこか腑に落ちない様子だった。
「にしてもさ・・・なんか変じゃない?」
龍河は首を傾げる。
「変?」
茜は静かに考えを口にした。
「だって馬場さんの予想が正しいんなら
この村は焼かれてて存在しない村な筈でしょ?」
その言葉に龍河ははっとする。
「あ・・・確かにそうだよな」
彼は目の前の景色を見渡した。
焼け跡どころか、家々は当時の姿を保ったまま静かに佇んでいる。
「焼かれて消された村なはずなのに・・・」
低く呟き、龍河は目を細めた。
「まるで焼かれる前まで時が戻ってるみたいだ」
朝陽はその言葉を繰り返すように呟く。
「時が戻ってる・・・」
信愛は不思議そうに首を傾げた。
「どういう事?」
焔垂は辺りを見回しながら静かに言う。
「でも、人が住んでる気配がないですよね」
家々には生活の音が一切なく、風が吹き抜ける音だけが村中を漂っている。
「まるでゴーストタウンですよ」
龍河は苦笑いを浮かべた。
「言われてみれば確かにそうだな」
視線を家々へ向けながら続ける。
「これだけ家があんのに、全部
無人だってのも変な話だよな・・・」
誰もが村の異様な静けさに言葉を失った、その時だった。
「馬場・・龍河様ですね?」
突然、背後から落ち着いた男の声が響く。
全員が一斉に振り返る。
そこには、白装束に身を包んだ一人の男が静かに立っていた。
龍河は警戒するように一歩前へ出る。
「だ、誰だ!?」
男は穏やかな表情を崩さない。
龍河は眉をひそめる。
「なんで俺の名前を知ってる?」
その姿を見た信愛の表情が強張る。
「あ、こ、この人!」
震える声で叫ぶ。
「教団の人です!私を連れ去った人です!」
龍河の表情が一変する。
「な、なに!?」
焔垂も男を指差した。
「確かにこいつでした!間違いありません!」
男はまるで敵意を見せることなく、信愛へ軽く一礼した。
「お久しぶりですね、白縫信愛様」
そして視線を一行へ移す。
「それに他の方たちは、信愛様のご友人の──」
一人ひとりを見渡しながら、淀みなく名前を呼んでいく。
「菅生茜様──
花牟礼さくら様──
八乙女焔垂様──
そして浦添朝陽様」
全員が息を呑んだ。
龍河は険しい表情のまま男を睨む。
「俺たちの名前まで把握してるって事か」
茜は青ざめた顔で呟く。
「うわぁ〜・・まぢでか〜・・」
龍河は男から目を離さず問いかけた。
「白縫銚子さんはどうした?
どこにいる?無事なんだろうな?」
男は微笑を崩さないまま、静かに答えた。
「ご安心ください」
その一言に、信愛は小さく胸を押さえる。
男はそのまま村の奥へ手を差し伸べた。
「とりあえずこちらへ・・教祖様がお待ちです」
信愛は小さく呟く。
「坪野康仙・・・」
龍河は短く息を吐き、決意を固めるように頷いた。
「わかった・・・」
男は丁寧に一礼した。
「ご案内いたします」
一行はなおも警戒を解くことなく男の後ろへ続く。
静まり返った新開村の奥地へ。
誰一人生活している気配のない村の中心へ向かって、彼らは静かに歩き始めた。
コメント
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×××さん、第287話読みました!「焼かれて消された村が、焼かれる前の姿でそのまま残っている」という違和感がすごく効いてますね。廃墟の民家から一転、整然と並ぶ日本家屋——時間が戻ったみたいな不気味さが伝わってきました。そして白装束の男、全員の名前を淀みなく呼んだシーンは背筋が冷えました。信愛を連れ去った人物が村の入り口で待っている、敵が先回りしている感じがたまらないです。坪野康仙ってどんな人物なんだろう…続きが気になります!