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「ってか豪。何でお前…………相沢さんの事を……知ってるんだ?」
さっきまで散々大きな声を上げ、曖昧な雰囲気にしようと躍起になっていた純。
嫉妬心を抑えつけたような低い声音で、矛先を向けるように親友を問い詰めた。
「この前の連休初日に、奈美と相沢さんが立川でランチしてて、俺が迎えに行って、相沢さんも西国分寺だっていうし、家まで送ったんだよ」
「じゃあ相沢さんの事…………知ってて当然か……」
純が大雑把に前髪をゆっくり掻き上げる。
(マジか。連休中に二人は会ってたのか……。あ、その時に相沢さんは、離婚した事を高村さんに話したのか? だから俺にチャンスですよ、と……)
彼は前髪をクシャリと掴んだまま、朧気に考えていた。
「っていうか、谷岡さんと恵菜が、二人でお食事に行ったのが初耳だし、すっごい気になるんですけど!」
「あっ……いや…………まぁね……」
テンション高めの奈美の声音に、純は狼狽えながら顔を紅潮させる。
「何がきっかけで、恵菜と食事に行く事になったのか、ぜひとも知りたいですねぇ。ねぇ? 豪さん?」
奈美が同調を求めて、豪に面差しを向ける。
「ああ、俺も聞きてぇなぁ……」
豪が、甘やかな笑みを映しながら奈美を見下ろすと、彼女の手を取り、指を絡ませた。
「!!」
本橋夫妻の異常ともいえる仲の良さに、純は、身体を大袈裟に仰け反らせた。
(はぁ!? あの豪クンが、俺の目の前で女と手を繋ぐってか!? ある意味イッちゃってるだろっ……)
親友が部下と出会ってから、こんなにデレデレになるなんて、純は考えもしなかった事だ。
しかも、堂々と手を繋ぎ、話の続きを待ちながら、純は夫婦に見つめられている。
豪の以前の恋人、岡崎 優子にも会わせてもらった事があったが、こんなベタベタした関係ではなかったはず。
ある程度の距離を保ち、純の目の前でイチャつくなんて事は一切なかった。
「純クン? 相沢さんと二人で、食事に行く事になったきっかけは何かなぁ〜?」
親友の面白がるような、からかっているような言い草が、彼にとって鼻につく。
「…………分かったよ。話せばいいんだろ……?」
純は、目の前の夫婦に呆れながら、ガクリと首を垂れた。