純は観念して、本橋夫妻に経緯を話し始めた。
仕事の後、ファクトリーパーク近くの公園で、恵菜が元ダンナと言い争いをして、殴られそうになっていた所を純が助け、万が一の事を考えて、互いの連絡先を交換。
男がまだ近くにいるかもしれない、と考えた純は、恵菜と一緒に電車で帰宅。
彼女からお礼のメッセージが届き、返信する際に食事を誘った事を、かいつまんで二人に話した。
「早瀬くん……離婚してからも恵菜に付きまとってるなんて……。しかも、手を上げようとまでして。何を考えているんだか……」
奈美が怪訝な表情を浮かべていると、夫の豪が素早く反応する。
「奈美。早瀬くんって誰だ?」
「恵菜の元ダンナさんだよ。私と恵菜の高校の同級生で、一年と三年の時に同じクラスだったの。ちなみに、私と恵菜は高校三年間、同じクラスだったんだよ」
「そ、そうか……」
「もう! 豪さんってば、いちいち男子の名前に反応しすぎだし!」
奈美が眉尻を下げ、フウッと短くため息をついた。
(元ダンナは、高村さんと相沢さんの同級生か。どうりで若い感じがしたワケだ……)
純は頬杖を突きながら、壁に飾ってある本橋夫妻の結婚式の写真に目を向ける。
「食事した時、相沢さんに豪たちの結婚式の話をして、俺が高村さんとバージンロードを一緒に歩いたって言ったら、見たかった、なんて言ってたな……」
恵菜との食事が楽しかったのを思い出し、純の表情が緩みそうになってしまった。
「あ! そうだっ!!」
上司の言葉に反応するように、奈美が手をパンッと叩く。
「今から、恵菜を呼んでみましょう!」
「はぁ!?」
突如、部下の奈美が言い出した提案に、純は声をひっくり返しながら瞠目させた。
「ああ、そういえば、相沢さんの家って、うちから歩いて十分くらいって言ってたな。彼女も、まだうちに来た事ないし、奈美から連絡してみたらどうだ?」
豪も何気に乗り気なのか、奈美に話を振っている。
(うわぁ……相沢さん、豪の家からモロご近所さんだったんだ……)
「急だし、恵菜も予定があるかもだけど、電話してみましょう!」
奈美がニコニコしながら自身のスマートフォンを掴むと、純は展開の早さに唖然としていた。