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(ピアノ曲か。意外だな……)
「今回は、ピアノソロの楽曲なんですね」
圭は、腕を組みながら、ぼんやり考えていると、柏木も同じ事を思っていたようで、彼女に穏やかな口調で切り出す。
「はい。敢えてピアノソロにしてみました」
やがて、曲が終わると、Hanaは『ありがとうございました』と小声で呟きながら、軽くお辞儀をする。
「では、Hanaさんが、このアプリを使った感想や気付いた点がありましたら、どうぞおっしゃって下さい」
圭がペンとノートを机の上に広げると、Hanaは、バッグから一枚の紙を取り出した。
恐らく、使った感想などが書いてあるのだろう。
「このアプリは、曲の途中でBPMを変えられないんですか?」
BPMとは、曲の速度の事である。
「はい。今の段階では、BPMを曲の途中で変更させる機能はなし、ですね……」
Hanaの質問に柏木が淡々と回答すると、彼女は椅子に座り直し、背筋をピンと伸ばした。
「音楽には色々なジャンルがあって、作ってみたい曲のジャンルも、ポップスやロック、クラブミュージックなどに限らず、中にはクラッシックやピアノソロの曲を作ってみたい、と思う方もいると思うんです」
Hanaの真剣な言葉と、意思の強い瞳に、圭は気持ちが吸い込まれていきそうになった。
「クラッシックやピアノ曲って、テンポの揺らぎが重要、というか、音楽に表情を付ける大事な要素だと思うので、今回は敢えてピアノ曲を作った、というのもあるんです。テンポが同じままのピアノ曲って、機械的になるので……」
「う〜む……なるほど……」
柏木は、腕組みをして、遠くに視線を這わせながら低く唸っている。
「他に、気付いた点などありましたか? ありましたら遠慮なく、ぜひお聞かせ下さい」
圭は、改善点をHanaから引き出そうと、ペンを持つ指先に、力が込められる。
「もう一点ですが、スコア入力には対応していないんですか?」
スコア入力とは、五線紙に、おたまじゃくしが乗っている、楽譜形式で入力する事。
柏木が渋い表情を浮かべながら、頭の中で回答を整理しているように感じた圭が、腕組みを解き、椅子に座り直す。
「このアプリは、楽譜が読めない人でも、手軽に作曲してみたい人向けですので、スコア入力には対応してないんですよ」
圭が真剣な眼差しをHanaにぶつけると、彼女は薄茶の瞳をかち合わせてきた。