テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「音楽で演奏の経験はあっても、作曲するのは全く初めて、という方もいると思います。そうなると、楽譜で見慣れている方は、棒グラフのようなピアノロール入力は見にくいかと思うんです」
「なるほど」
(彼女…………俺が思っている以上に、色々なユーザーの事を考えている……)
Hanaの意見に、圭は舌を巻いた。
彼女の提案と、ハヤマ側の回答がぶつかり合う中、防音室に張り詰めた空気が漂い、静寂だけが支配している。
「Hanaさんの貴重なご意見を、一度、持ち帰って精査させて頂きます。アプリの容量の問題もありますが、できるだけ、Hanaさんのご意見に添えるように、改善していきたいと思います」
「ありがとうございます」
柏木の言葉に、Hanaは軽く頭を下げると、圭が上司の言葉を引き継ぐように、口を開く。
「それから、スマートミュージックが正式にリリースされたら、特設サイトを開設して、前回のHanaさんへのインタビュー、先ほど聴かせて頂いた楽曲を掲載しようと考えています。もちろん、Hanaさんの顔出しはしませんし、手で作ったハートマークの写真を載せたいと考えております。よろしいでしょうか?」
「あ、それは全然大丈夫です。スマートミュージックをきっかけに、DTMの楽しさを知ってもらえるのなら、私も嬉しいですし……」
先ほどまで、視線がバチバチに火花を散らしていた圭とHanaだったが、フッと表情を緩め、人懐っこい笑みを見せた。
「前回、質問できなかった事が一つだけ、あるのですが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい。どうぞ」
圭は今一度、ペンを握り直し、Hanaに眼差しを向けた。
「メロディが浮かぶ時って、どんな時に浮かぶ事が多いですか?」
「そうですね…………」
Hanaは顎に手を添えながら目線を上に向け、考えを張り巡らせている。
「…………自分の喜怒哀楽がピークに達した時、心の隙間に、フッとメロディが入り込んでくる事が多いですね。この前、嬉しい事があって、すぐにイメージが湧き上がってきたので、少しずつ楽曲を制作してます」
Hanaのコメントを、圭はノートに書き記していく。
「DTMで作曲して良かったな、と思うのは、どんな時ですか?」
「投稿サイトで感想を頂ける事も、もちろん嬉しくてありがたい事なんですが、自分の中にある、言葉では例えられない感情を、音で表現できる事ですね……」
結局、圭は質問を一つだけするはずが、いつしかHanaの事を深掘りしていくうちに、時間は既に定時の十七時を過ぎていた。
「今日は、貴重なご意見をありがとうございました」
「こちらこそ、貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございました」
意見交換も無事に終了し、柏木が声を掛けると、三人が一斉に立ち上がる。
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