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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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口の中に突っ込まれた、

いや突っ込んできた正体は “ 焼きそば ” だった。

関節キスを気にする暇もなく、

僕はその味に溺れる。

もちもちとしている麺だが、

所々カリカリとしている。

そんな麺に旨辛のソースが絡みついている。

その上、

人参やキャベツなどの野菜も口の中で一緒に踊る。

1口食べると旨辛のソースが胃を刺激して、

脳を刺激して、

『もっと食べたい』と催眠をかけてくる。

それを無視すると先程の味を思い出すかのように口の中の涎が溢れ出す。

あっさりとしていて飽きない。

が、仄かに紅しょうがの味もする。

そのおかげでより飽きない。

しかも酸っぱ辛いせいか、

これもまた食欲をそそる味。

そう僕が焼きそばに沼っていると、

「気に入ったんだね!」

「だと思って実は古佐くんの分も買っといたんだ!!」

と言いながら畑葉さんは自身が持っていた袋から畑葉さんが食べているものと同じものが出てきた。

流石の僕でもこんなには食べきれないと思いつつも、胃はそれを欲しがっていた。

「ありがとう」

そう言いながら受け取る。



お祭りの焼きそばがこんなに美味しいだなんて。

いや、もしかしたらここのお祭りだけなのかもしれない。

いつも『所詮お祭りのだから美味しくないだろ』とか思っていたけど、

実は隠れ職人が潜んでいたのか…

しかもそれを見つけてくる畑葉さん。

恐るべし…

焼きそばを完食したのにも関わらず、

僕のお腹は鳴り止まない。

そうして次に僕が目を付けたのは熱々の “ たこ焼き “

焼きそばで口の中がしょっぱくなったから次は甘いものを食べようと思っていたところだけど、

1度目にすると食べたくて仕方がなくなってしまった。

それからよく見ると畑葉さんが僕に買ってきたのはミニサイズのものばかりだった。

自分のは普通のより2倍くらい大きいサイズを買って食べているのにも関わらず。

なんとも優しい人だ。


2人して無言に食べていく。

好きな人との初めてのお祭りだとは思えないほどに。

だけど、それはそれで趣があっていいと思う。

そう思うのは僕だけだろうか。


それはそうと熱々のたこ焼き。

爪楊枝を刺せば、穴から煙が出てくる。

その煙が僕の顔に当たった瞬間、

僕の顔は仄かな暖かみに包まれた。

だけど中はきっと熱いと予想出来る。

『たこ焼きは熱々がいい』猫舌の人が聞いたら何言ってんだこいつと思われそうな言葉。

だけど猫舌の人でも納得してしまう魔法の言葉でもある。

そんなことを考えていると

「古佐くん?冷めちゃうよ?」

と言われてしまう。

僕は慌ててたこ焼きを口に突っ込んだ。

マグマのように熱いことを忘れて。

舌が、

喉が、

火傷しそうになる。

が、タコの食感や鰹節の香ばしい味わいが煙と共に胃の中へと消えていく。

熱いという感覚よりも先に美味しさが来てしまう。だ

が、それがたこ焼きというもの。


気づけば僕は畑葉さんから貰ったミニサイズの物たち全てを食べ尽くしていた。

それよりも、また畑葉さんは僕の前から消えている。

何か物珍しいものを見つけたのだろうか。

だからまた居なくなってしまったのだろうか。




しばらくすると案の定どこからか帰ってきた。

その手には小さなりんご飴のようなものを沢山持っていた。

もしかしてこれが『フルーツ飴』だろうか。

「おかえり」

僕がそう言うと

「ただいま!!」

「はいこれ!古佐くんの分!」

と言いながら僕に串に刺さった苺が飴に包まれているようなモノを渡してきた。

渡すというか押し付けてきたけど…

「これがいちご飴…?」

「そ!」

「食べてみて!!」

そうは言うものの、

畑葉さんの抱えているフルーツ飴の量が先程と同じくらいなのが気になる。

畑葉さんの胃は底なし沼なのだろうか。


昔食べたりんご飴は飴が固くて歯が折れそうだった。

けど、このいちご飴は全然違った。

飴は薄くて耳に心地よい咀嚼音を置いていく。

更には甘酸っぱい苺が口に広がるも、

甘い飴で丁度良くなる。

「美味しい?」

みかん飴を頬張りながら畑葉さんが聞いてくる。

一口で食べているのが恐ろしい。

口の中に飴が刺さりそうで心配だ。

「うん…」

「何?」

「いや、なんで全部一口で食べるのかなって…」

「ちびちび食べるより一口で食べた方が幸せも大きいじゃん」

確かに。

そう心の中で思いながらも、『だとしても一口大きすぎない?』と疑問を抱く。

僕がそんな疑問を抱いてる最中も畑葉さんは自身の口にフルーツ飴を突っ込んでいく。

隣からはバキバキと飴の咀嚼音が聞こえる。

まるで化け物が横に居座っているようだ。

一口で食べるのに果汁が一切出てきていないのは器用なんだろうと思うけれど。

まぁ、クチャラーなどとかよりはマシか…



「あ!!もうちょっとで花火の時間じゃない?」

「そろそろ向かお!」

そう言いながら畑葉さんは先に向かう。

またもや僕はそれを追った。





花火が見れる丘に向かっている最中、

あることに気づく。

それはさっきまではしゃいで元気だった畑葉さんの話し声も聞こえないし歩調も遅い。

何かあったのかと後ろを振り返ると立ち止まってる畑葉さんの姿があった。

「どうしたの?」

そう僕が言うと

「ちょっと、靴擦れしちゃって…」

と言いながら自虐じみた笑みを向けてくる。

確かに靴擦れを起こしている。

「今日は花火諦めてもう帰る?」

「花火だって来年───」

『来年も見れるし』そう言おうとした瞬間、

畑葉さんが僕の声に上乗せてくる。

「おんぶ」たったその一言だけ。

まさかと思うがおんぶのまま花火会場で花火を見るとか?

畑葉さんなら有り得そう。

そう思っていると

「本当はお姫様抱っこがいいけど、きっと古佐くんには無理だもんね?」

「周りの目気にしちゃったり?」

と何故か馬鹿にしてくる。

気を使ってるのはこっちだというのに。

それになんだか僕はイラついて

「お姫様抱っこがいいんだったらそれで行くけど?」

と言いながら畑葉さんをお姫様抱っこする。

「え?!ちょっ…下ろして!!」

「自分で煽ったのが悪いんでしょ?」

「煽ってない!!」

そんな会話のやり取りをしながら僕は花火会場へ畑葉さんを運ぶ。

まぁ、花火が見れる ” 隠れスポット “ に向かってるんだけれども。

それより畑葉さん軽いな…

ちゃんと食べてるのかな…

いや、食べてそうだな。

さっきの屋台の食べ物たちといい、

朝ごはんにはきっと桜餅。

なのに、なんでこんなにも軽いんだろうか。

しかも畑葉さんの香りで溺れそうになる。

こんなの好きにならない方が無理かもしれない。

頭に残る桜の香り。

でも時間が経ったら消えてしまう香り。

僕が狐になった日は、君の命日だった。

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