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それから数日後。
疲れが癒えた一同は、警察署へと足を運ぶことになる。
理由は先の事件の事情聴取の為である。
そこで刑事の口から語られたのは、天縁教団という組織の恐ろしさと、その内側で起きていた出来事の断片だった。
坪野は天縁教団発足から、現在に至るまでの45年間で、少なくとも30名以上の信者を「ナワバリ様候補」として新開村に囲い込んでいたと言う。
そしてその30名以上という人数は、同時に監禁され殺害された人数とも言えた。
外界から切り離され、人々の記憶から忘れ去られた新開村という場所で、彼らは監禁され、そして命を落としていった。
刑の重さは明白だった。
重くて死刑。軽くても無期懲役は免れない。
だが、坪野の側近だった2名の信者ついては、直接の関与を疑われながらも、決定的な証拠取得には至っていなかった。
坪野自身が、すべては自分の命令で動いただけだと証言し、罪を一身に引き受けたからだ。
現在、坪野の側近2名は、保護観察下に置かれ都内の就労施設で社会復帰を目指し、日々を過ごしているという。
そして天縁教団は、その中心人物であった坪野の正式な逮捕を境に完全に解体された。
かつて国によって歴史から抹消され、多くの人間が教団により閉じ込められていた新開村も、現在は国によって厳重に管理され、立ち入りが禁じられた場所となっている。
風だけが通り抜けるその土地に、過去の気配だけが静かに残されていた。
◇ ◇ ◇
数日後。MW編集部会議室。
怪異探求倶楽部の一同は、事情聴取から数日後、龍河の呼び出しを受けて再びMW編集部を訪れていた。
席に着くなり、信愛が不思議そうに首を傾げる。
「え?記事にしないんですか?」
龍河は腕を組み、静かに息を吐いた。
「ああ、今回は見送ろうかと思ってる」
「どうしてですか?
超超超特ダネじゃないですか!?」
茜が身を乗り出す。
「いや、ギガマックスか!」
焔垂が半笑いで突っ込む。
すると龍河はゆっくりと首を横に振った。
「坪野自身が、公表を求めてないらしいんだ」
「坪野康仙が?」
#普通
野々さくら
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805
44
ありあ
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信愛が聞き返す。
「そもそも、こんな眉唾な話、誰も信じないだろ?」
焔垂も苦笑しながら頷いた。
「た、確かにそうっスね。灰熱病なんて
聞いたこともない疫病が蔓延した新開村を
国が大阪万博成功のために焼いて消し去ったなんて」
さらに肩をすくめる。
「おまけにイザナギとかイザナミとか
神の名前まで並んでたら『どこの三文小説だよ
』
ってツッコまれそうだしな・・・」
龍河は苦笑を浮かべたまま続ける。
「カグツチ計画に参加した当時の自衛隊員が
『全部実話だ』って証言してくれるなら話は違うんだが」
言葉を切り、遠くを見るような目になる。
「今どこで何をしてるのか・・そもそも生きてるのか
死んでるのかすら分からないんじゃな・・・」
「確かに証拠がないですもんね・・」
信愛が静かに呟くと、焔垂も頷いた。
「ソースが坪野の発言だけじゃ弱いしな」
「ああ、そういう事だ」
龍河は真剣な表情に戻る。
「霊貴冥孤の記事を書いた俺が言うのも何だが
証拠不十分なまま政府の隠蔽なんて記事を書いたら
それこそ訴えられる可能性だってあるからな
下手したらパクられる可能性だってある」
「そうですよね・・・」
信愛は俯く。
それから会議室に重たい空気が流れる。
その沈黙を破ったのは朝陽だった。
「なら坪野は、世間的に見たら、とんでもないカルト
教団のイカれた教祖に見えるって事になるんですか?」
龍河は静かに頷く。
「まあ、坪野の逮捕は今後間違いなく報道される
そうなった時の世間の声は・・・今、浦添君が
言ったような反応になるだろうな・・・」
朝陽は複雑そうに眉を寄せた。
「なんだか消化不良って感じですね」
信愛はそんな朝陽を見つめ、小さく名前を呼ぶ。
「朝陽くん・・・」
朝陽は目を伏せたまま続けた。
「まあ、坪野がやった事は、勿論何があったって
決して許しちゃいけない事なんですけどね」
龍河は静かに頷くと、少し表情を切り替えた。
「あと、ここからが君らを呼んだ本題なんだが」
「本題?」
信愛が首を傾げる。
龍河は小さく笑った。
「実はな、哲哉さんから、君らにある提案が出たんだ」
「哲哉さん?」
信愛は少し考え込み、はっとしたように顔を上げる。
「哲哉さん?例のTAMAYAさんの時に
会ったあの小諸哲哉さんですか?」
「ああ、その哲哉さんだ」
焔垂が興味津々といった様子で前のめりになる。
「提案って何ですか?」
龍河は一同を見渡し、ゆっくりと口を開いた。
「実は──」
コメント
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×××さん、お疲れさまです。第306話、拝読しました。 坪野の罪の重さと、その真実を世に出せないもどかしさが、じんわりと胸に残りました。朝陽くんの「消化不良」という言葉が、読者である私の気持ちそのままというか…。真実を抱えたまま生きる登場人物たちの、静かな強さが伝わってくる回でした。哲哉さんからの提案、どんな展開が待っているのか続きが気になります!