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「アァア!オオォ」
リュウトは突き進む、心の奥底から涌き出る何かに導かれながら。
「ガ、ァァア!!」
洞窟の岩を砕く、力任せなのでまずは自分のレイピアがボロボロになり使えなくなった。
「アァアァア!!!」
レイピアが使えないなら拳、殴れば岩が砕ける。
「イイイイイイ!!」
アームの装備がボロボロになり、むき出しの拳が出てくる。
「ガ、ァァア!!」
拳が砕け、骨がむき出しになる、しかし、その傷が出来たところは肉が戻り、元の人間の皮膚ではなく、黒い皮膚がついて復活する。
そして
ついに
洞窟奥のお姫様の部屋へ足を踏み入れた。
「ーーーーーーー!!」
「ひっ!?りゅ、リュウト……くん?」
『アオイさん!助けに来ました!』
「……」
声を出そうとするがうまくだせない。
「え、えと、話せる状況じゃないよね?ははっ」
『ち、ちが……アオイさん……アオイさんアオイさん……!』
手を伸ばして一歩、一歩と近づく度に魔力が抜かれていくそして……
「が、ぁ……」
目の前が真っ暗になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうしよ……」
――声が、聞こえる。
震えて、戸惑って、けれど優しくて。
俺が、心の底から好きになった声。
この人に、振り向いてほしい。
この人の笑顔を、守りたい。
「え!? あ、あれ!? なにあの光、こっち来てない!?」
焦ってる……
混乱してる……
でも――
やっぱり可愛い。
あぁ、やっぱり好きだ。
この人のためなら、
「バリア貫通してきた!? やば! 逃げ____」
――死ねる。
「【限界突破】!!!」
魔力が、爆ぜた。
空間が震え、視界が歪む。
大気が悲鳴を上げる。
肉体の限界を超え、魂の扉すら軋む音がした。
そして――
リュウトは、動いた。
「アオイ……さん……アオイイィィィ!!!」
叫びと共に、両腕を広げて立ちはだかる。
全身の骨という骨が軋み、
皮膚は裂け、筋肉がねじ切れていく。
…………
………
……
。
「……」
気がつくと――俺は、アオイさんの膝の上にいた。
雨の音が遠くなって、世界がやけに静かだった。
でもそれより何より――
彼女は泣いていた。
顔をくしゃくしゃにして、声もなく、ただ涙をこぼして俺を見ていた。
「ア、オイ……さん……よかった……生きてて……」
「リュウト君……」
……ああ。やっぱりこの声、好きだな。
この人の名前を、呼べてよかった。
腕の感覚がない。
下半身も動かない。
……見なくてもわかる。たぶん、吹き飛んだんだ……良かった……上半身と顔は残ってて……
ああ――
俺、もうすぐ……死ぬんだな。
だったら。
「アオイ……さん……俺は……あなたのことを……」
喉が焼けて、声がうまく出ない。
それでも、最後の力を振り絞って伝えた。
「……好きでした……」
「っ!!」
驚いた顔。
でも、その目が、涙で揺れてるのがわかる。
あはは……
やっぱり、可愛いな……この人……
……どうせ死ぬなら――
「最後に……キスしてもらっても……いいですか……?
あの世で、自慢したくて……へへ……おかしいですよね……」
弱く、笑ったつもりだった。
でも、息ももう、うまく吐けなくて。
それでも、アオイさんは――
「っ!?…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
いいよ。僕で良ければ――喜んで♪」
その笑顔は、世界でいちばん、優しかった。
涙でぐしゃぐしゃな顔なのに。
それでも俺には、天使よりも綺麗に見えた。
そして――
「行くよ……」
唇が、触れた。
温かかった。
柔らかかった。
あぁ……これが……“キス”なんだな。
こんなにも、幸せなものだったんだ。
___ありがとう、アオイさん。
これで、もう――思い残すことなんて、何一つないよ。
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