テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
17話 勇者の相談
昼下がり
ふっくらは丸い体を揺らしながら
村の広場を歩いていた
短い脚がぽす ぽす
腹は前にふよんと突き出て
今日も安定の丸さ
その横で
琶が妙な格好をしていた
大きな体
長い首
重なった鱗
――なのに
今日はゆったりしたパーカーを着ている
袖から鱗が少しはみ出し
フードは明らかにサイズが合っていない
ふっくら
「ねぇ琶……
なんでパーカー……?」
琶
「……占い師だからだ」
ふっくら
「パーカーで!?
もっとこう、ふわっとした布とかじゃないの!?」
琶
「動きやすい」
(理由は雑)
そこへ勇者が一人、やってくる
整った顔
同じような装備
また同じ顔が来た
ふっくら
「またこの顔の人だ……」
琶
「珍しくない」
(本気で珍しく思っていない)
勇者
「……占ってください……
ぼく……本当に勇者なんでしょうか……?」
琶は静かにうなずく
パーカーの袖がゆるく揺れる
ふっくらは横でメモを取るふりをする
(字は書けていない)
琶
「……おまえは勇者だ」
勇者
「本当ですか……?」
琶
「勇者という“形式”に合致している」
ふっくら
「形式!?
人を形式で判断しないで!!
もうちょい励まし方あるよね!?」
勇者
「じゃあ……ぼく、なぜ記憶が薄いんでしょう……?」
ふっくら
「えっそれは重い!!
わたし聞きたくない!!」
琶は静かにうなずく
「……消されやすいからだ」
勇者
「消され……?」
ふっくら
「言わないで!!
いまそれ言っちゃだめなやつ!!
言っていいタイミングじゃない!!!」
琶
「……忘れろ」
ふっくら
「雑っ!!!」
勇者は深刻そうに
しかしどこか“薄い表情”で帰っていった
ふっくら
「ねぇ琶……あれ相談になってなくない……?
答え……出してあげようよ……?」
琶
「答えはない」
ふっくら
「なんで……?」
琶
「……答えは最初から“削れている”」
ふっくら
「ひぇぇぇぇ……
なんでそんなホラーみたいな言い方するの……!
読者怖がっちゃうよ……!!」
琶はふっくらの丸い頭を軽くつつく
「読者は平気だ。
おまえより鋭い」
ふっくら
「読者をいじるのやめて!!
全員見てるから!!!」
そこへ
また別の勇者が来る
また同じ顔
また同じ装備
同じ歩き方
勇者
「……ぼくの悩みは……」
琶
「聞かなくていい。
同じだ」
勇者
「えっ!?
ぼくまだ何も……」
琶
「同じだ」
(断言)
勇者は困ったまま帰っていった
ふっくら
「ひどくない!?
せめて聞こうよ!!
せっかく来たのに!!!」
琶
「……時間の無駄だ」
ふっくら
「それ占い師の言うことじゃない!!!」
パーカーのフードが揺れた
琶はため息をつきながら片付けを始める
ふっくら
「今日の相談……全部意味あった……?」
琶
「おまえが見学できただろう」
ふっくら
「意味が雑!!!」
焚き火の代わりに
夕日の赤が地面を染める
同じ顔の勇者たちは
遠くの道で
なぜか同じ方向へ歩いていた
ふっくらは気づかず
最後にこう言った
「……ねぇ琶、また占い師やる?」
琶
「……気が向けばな」
(読者に向けて目を細める)
ゆるいようで
どこかひそかにおかしい
そんな一日だった