疲労が溜まり切った身体での帰り道 。
家に着いた午前1時24分 。
ドアの鍵を閉めてダイニングテーブルに鞄を乱雑に置いた 。
着替えも化粧すら落とさずに書斎にしている部屋に入る 。
外の暗さとは真逆に部屋を明るくし 、 パソコンの電源を入れて仕事を再開する 。
家での残業はオフィスという檻に居なくて良いから少し気楽かもしれない 。
でも結局は仕事 。
仕事 、 仕事 、 仕事 、
ロボットの様に無感情で仕事が出来たらラクだろうな 、 なんて馬鹿みたいな思想を巡らす 。
キーボードを叩く音だけが鳴る部屋 。
ふと視線を遣った先でカーテンの隙間から光が溢れ出していた 。
スマホの画面に軽く触れて表示される5:18という数字 。
もう陽が昇り始めていた 。
「 あ “ ー … 」
デスクに広がる珈琲やカフェオレの容器 。
絶対に致死量には満たない 、 然し決して少なくない大量のカフェイン 。
仕事の最中ずっと誤魔化していた睡魔と疲労が一度に襲い掛かる 。
ひとりで使う癖に贅沢して買ったダブルサイズのベッドに勢いよく倒れ込む 。
重たい瞼をそっと閉じる 。
私が独り苦しもうが誰も眼を留めない 。
自分ですら誤魔化す 。
そんな世界の片隅で君は笑って生きているか 。
はたまた私と同じ様に落ちぶれているのか 。
前者が良い 。
珍しく人の幸せを願った 。
何時もなら何奴も此奴も私と同じ様な想いをすれば良い 、 なんて腐った答えを出す 。
どうしてか
君の事となると私は必死に幸せを願う 。
必死に 、 君を想う 。
何時から眠りについていたのか再び瞼を開けた時には午前10時を回るところだった 。
鈍器で殴られたかの様に痛む頭を抑えながら人に見せられない様な醜い姿を少しはマシになるように魔法を掛ける 。
服も化粧も昨晩の儘 、 やけに軽い扉を開けた 。
暫く街中を流離う 。
宛が無かった訳では無い 。
息が吐ける場所 。
‘ 息を止められる場所 ’ へと行きたかった 。
海風が髪を揺らす 。
静かな波音が時差で耳に届いた 。
「 海 … 苦しいかな 、 笑 」
どうでもいいか 。
浅い所の終わりまで進んで止まる 。
あと一歩足を踏み出せばもう手遅れ 。
くるりと一回りして身を投げ入れた 。
一切の音が聴こえなくなる 。
眼を開く 。
視界の先は太陽の反射で光り輝く水で埋め尽くされていて最期の景色がこんなにも綺麗なら悔い無しという事にしようと 、 そう思った 。
屹度もう苦しい時間は終わる 。
コメント
5件
お互い忘れられないくらい想い合うのが大好きです 一文一文りんちゃの言葉の紡ぎ方が大天才( ? あとは杜真くん頼んだぞっ👍🏻( は 勿論リピートします愛します楽しみにします語ります((
息を吐ける場所っていうのから、息を止められる場所っていうのに言い換えてる所がまじで天才です大好きです 静かに海に入るんじゃなくて、一回りしてから入るっていうのも綺麗すぎました、! 全力でリピートさせて頂きます
急なお知らせにはなりますが 16話にて完結致します 。 元々短めに作る予定だったのでまぁいいかな リピートしやすそうな長さですね是非してください(( うるさい では残り2話 、 御楽しみに🫶🏻