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夏。空が澄んだら。
「夏。」
名前を呼ぶ声がした。振り向くと幼なじみの叶がいた。
「叶。来てくれたんだ。」
叶はベット横まで来て椅子に座った。
叶とは幼なじみで高校までずっと一緒だった。叶はバスケ部の部長でずっと忙しいらしい。運動神経ば抜群だが勉強は壊滅的。テスト期間は真面目に勉強してるらしいけどその勉強が何一つ身についてない。毎回テストの結果は最悪で学年最下位ギリギリ。俺はそこそこ勉強ができるから「教えてやろうか?」と毎回テスト期間に言っているが毎回「いや、今回は行ける」と言っている。まぁ毎回最悪なんだけど…。謎に自信満々でちょっと面白い。俺は運動できないから運動できる叶がちょっと羨ましい。
「元気?」
「めっちゃ元気!夏は?」
「俺も元気っちゃ元気」
「なんだそれ」
俺は今入院している。と言ってもずっと前から。理由は病気だ。お母さんに病名は?と聞いても何も答えてくれない。だからちょっと怖い。でも毎週叶がお見舞いに来てくれるからその時は少し怖さが和らぐ。だから来てくれるのはとてもありがたい。そういえば叶は俺がなんの病気なのか知ってるのかな…?聞いてみたいけどなんか聞きづらい。急に幼馴染から「俺の病名知ってる?」なんて聞かれたら答えにくいか、
「最近忙しいの?全然来ないけど」
「部活とそうだけどテストも近くて勉強がさ、」
「あ〜、勉強教えてあげようか?」
「いや、今回は行ける!」
いつも同じことを言う。「今回は行ける」と毎回失敗に終わってるけど…真面目に勉強してるならちょっとは点数取れるはずなのにコイツは毎回高くて30点低くて5点ほんとにどんな勉強してんだよ。
「叶って毎回テストの点数やばいけどどんな勉強してんの」
「え、そりゃ勿論頭に八巻巻いて、机に向かってまずは10分、そんで10分終わったら休憩みたいな」
「その勉強法はいいと思うけど頭に八巻は何?受験生か?お前」
「やる気出るじゃん」
「出ねぇよ」
マジでどんなふつに勉強してんだよ、頭に八巻は受験生しかしねぇよ。いや、受験生もする人ほとんどいないだろ。そういや叶の勉強してる姿見たこと無かったわ……こいつ本当に勉強してんのか?
「叶、10分休憩終わったらまた10分勉強すんの?」
「いや、飽きたらそれで終わり」
「ダメじゃねぇか!」
真面目に勉強してると思ったら大間違いいや、10分勉強するだけでも偉いが…流石に飽きたらそれで終わりはちょっと……俺も勉強は好きな訳では無いが流石にそれはない。
「お前…飽きたら辞めるってどういうことだよ」
「そのまま。飽きたらやる気無くなるじゃん」
「確かにそうだわ。」
「まぁ、テスト頑張れよ。テスト終わったら結果楽しみにしてるわ」
「期待しとけよ〜✨」
「おぉ、期待しとく。」
こんな何気ない会話を毎週している。一人で病室にいても寝る以外やることがないからこうやって話すだけでも気分転換になる。だから出来ることなら毎日来て、毎日話したい。我儘かもしれないけど今すぐ退院して、叶と外でバカみたいに遊びたい。だから俺は退院できる日をずっと楽しみに待ってる。勿論毎週叶話すのも楽しみだけど。
俺は少し微笑んだ。退院が楽しみで笑ったのか叶がバカ言ってるのが面白くて笑ったのか分からないけど…。でも毎週叶と話す時間は楽しくて好きだ。
「んじゃ俺そろそろ帰るわ。」
叶はベット横の椅子から立ち上がった。
「わかった。外暗いし気をつけろよ、」
俺は体を少し起き上がらせて叶の方を見る。
「じゃあ、身体気をつけろよ。」
「お前もな。」
叶はニカッ、と笑い病室のドアを閉めた。
静かになった病室。今日の叶とのやり取りを思い出す。相変わらず馬鹿みたいなことしか話してないけど、それでも俺にとっては気分転換ですごい楽しかった。出来ることなら毎日これがいいな。流石に叶も忙しいか…、毎週病室にくる叶は楽しそうで、今日あった出来事や先生の愚痴、好きな人の事とか色々話してくれる。それを聞くのも楽しいに叶のボケにツッコミを入れるのも楽しい。俺がボケると叶はツッコミを入れてくれるしで叶と話している時は治療の痛みも、嫌なことも全部忘れられる。
「……叶。………やっぱり…………」
ポロっと、独り言が出る。
夏。空が澄んだら。
(続き出ます✨)