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執念深い2人に振り回されずに的確に追い詰めて息の根を止める颯介さんは過去の経験もあって冷静沈着に対処できるんだね✨✨凛ちゃんも紅子ママのアドバイス通りにしたら心配ないよ🌷頑張れ〜👍
腰振り類友≒タク友、おかしな事が続けば脳みそもおかしくなる😭それだけ2人が魅力的なのだろうけど♥颯介さんの対応が丁寧な対応で用意周到!大人の男は違うね😊信頼関係、安心できる相手なら大丈夫♥そして、紅子姐さんの言葉が染みる👍
凛ちゃんが、二人が何をしていたのか知ってるってのが解ったらどう出るかしらね。 それにしても二人の執念が凄いねぇ😅
そして、土曜日がやってきた。
颯介に相談したあの夜、凛はどうしても『あのこと』を口にできなかった。
西岡と奈美が会社の会議室で関係を持っていた、その事実だ。
言ってしまってもよかったのかもしれない。けれど、どうしても口にできなかった。
自分の勤める会社の実態を呆れられるのが怖かったし、男女の深い関係はプライバシーにも関わる。
だから凛は、何も言えないまま今日を迎えてしまった。
颯介との約束通り、二人は午後三時に待ち合わせ、リフォーム現場へ向かう。
走り出した車の中で、凛は不安げに口を開いた。
「西岡さんらしき人は見ませんでしたが……来てないのかな?」
「後ろのタクシーにいるよ」
「えっ! またタクシー?」
奈美のときの同じ展開に、凛は呆れたように声を上げた。
慌てて後ろを振り返ると、一台のタクシーがぴたりとついてきている。
「ああっ、もうっ! どうしてこんな人ばかり……私、人間不信になりそうです……」
動揺して両手で顔を覆った凛に、颯介が静かに言った。
「さらに後ろを見てごらん。もう一台タクシーがいるから」
ぎょっとして振り返ると、西岡のタクシーの後ろに、もう一台タクシーが続いていた。
「まさか……」
「あの女かもしれないな。今日はさらに厄介になりそうだ」
颯介はそう言いながらも、どこか楽しげに頬を緩めている。
その様子を見た凛は、ふっと肩の力が抜け、なんだか馬鹿らしくなってきた。
「もういっそのこと、この状況を楽しもうかな……」
「前向きなのはいいことだ」
颯介はにっこり微笑み、軽快にハンドルを握り続けた。
リフォーム現場へ行くと、工事はほぼ完成に近づいていた。
颯介が買ってくれた差し入れを凛が皆に配っていると、彼は職人たちに向かって声をかけた。
「先日内見に来たお客様が、こちらをとても気に入ってくれましてね。その後、無事に契約が終わりました。これもみなさんのおかげです。ありがとうございました」
突然の嬉しい報告に、凛も職人たちも驚いて目を見開いた。
真っ先にマサが口を開く。
「売り出す前にもう売れちゃったのかい? そりゃあ良かった。俺たちのリフォームを気に入ってもらえたなら、こんな嬉しいことはないな」
すると、別の職人が続けた。
「良かったですね~。でも、この物件に一番尽力したのは凛ちゃんだろう? 彼女のリフォーム案が良かったから、すぐ売れたんですよ。良かったね、凛ちゃん」
「ありがとうございます。でも、やっぱり図面通りに丁寧な仕事をしてくれた皆様のおかげですよ。素敵に仕上げてくださり、本当にありがとうございました」
「いやあ、俺たちは言われたとおりにやっただけですよ。でも、すぐ売れたって聞くと嬉しいもんだな~」
「「うんうん」」
「はい!」
凛の気持ちは一気に明るくなった。
さらに颯介は職人ひとりひとりに心づけを手渡していく。
「これは、せめてものお礼です。帰りに何かおいしいものでも召し上がってください」
「これはこれは、ありがとうございます」
「「すみません、ありがとうございまーす」」
「ありがたいけど、こんなのもらっちゃっていいのかねぇ」
マサの言葉に、凛が笑いながら言った。
「大丈夫ですよ。会社には内緒にしておきますから」
その言葉に、その場にいた全員がどっと笑い、現場の空気が一気に和んだ。
リフォーム現場を後にした凛は、颯介に礼を言った。
「みんなへのお心遣い、ありがとうございました」
「うん。納得のいく仕事をしてもらったんだ、これくらいはね」
微笑む颯介の横顔に、凛は思わず見とれてしまう。
大人の男の余裕が、凛にはまぶしく映った。
車に戻った二人は、気を引き締め直してタワーマンションの駐車場を後にした。
走り出した車の中で、凛が尋ねる。
「このあと、どちらへ?」
時刻は、すでに午後5時を回っていた。
「少し早いけど、食事に行こうか」
颯介はそう言い、湾岸方面へ車を走らせた。
薄暗かった景色は徐々に夜へと変わり、窓の外には美しい夜景が広がっていく。
凛はその景色に見とれていたが、ふと我に返って後ろを振り返った。
すぐ後ろに一台のタクシー。そして、少し間をおいてもう一台が見える。
凛と同じくバックミラー越しに後方を確認した颯介が言う。
「混んできたから、二台目はフェイドアウトしそうだな」
「みたいですね」
徐々に距離ができていく二台目を見ながら、凛もそう思った。
「それにしても、すごい執念だな」
「本当に……なぜそこまでして……」
「まあ、プライドの高いやつほど諦めが悪いからな」
「それにしたって異常です。二人とも、おかしいわ……」
「まあ、世の中には変な奴がいくらでもいるからな」
しみじみと言う颯介を見て、凛は気になって尋ねた。
「もしかして、真壁さんも同じような経験があるんですか?」
「何度もあるよ。若い頃は派手な付き合いが多かったから、そういう類の人間も結構いたんだ」
「えっ! それって、ストーカー……?」
「うん」
凛は驚きのあまり、目を丸くした。
「そうだったんだ……」
「うん。それと、念のため言っておくけど、君に否があってこうなってるわけじゃないんだから、気にするな」
「……でも」
「まあ、憂鬱になる気持ちはわかるけど、全部俺に任せろ」
「えっ?」
「昨日、興信所から調査結果が届いたよ。後で見せるけど、それにカメラの証拠を添えて、俺が会社に掛け合ってやるから」
凛は驚き、戸惑いながら口を開いた。
「でも……真壁さんにそこまでご迷惑をかけるわけには……」
「大丈夫だよ。田辺部長とは昔からの付き合いなんだ。だから、まずは田辺さんに話してみるよ」
田辺は凛が最も信頼している上司だ。
その田辺に颯介が掛け合ってくれると知り、凛は少し肩の力が抜けた。
「すみません、いろいろご迷惑をおかけして」
「気にするな。さあ、そろそろ着くぞ。降りる準備して」
「はい」
バッグを手に取り、凛は前を向いた。
そして、自分が颯介を心から信頼していることを、改めて実感する。
そのとき、紅子からのアドバイスがふいに頭に浮かんだ。
『思っていることを正直に伝える』
『気になっていることがあればはっきり聞く』
『してほしいことがあれば我慢しないで言う』
『自分に嘘をついたりごまかしたりせず、相手に誠実に向き合う』
『本来の自分をちゃんと見せて、いいところも悪いところも知ってもらう』
『正々堂々と、ありのままでいきなさい』
その言葉を噛みしめながら、凛は思った。
(この人なら、大丈夫かも……。だから、あの二人の関係を、素直に話してみよう……)
凛は、今まで言えなかった事実を颯介に話す決意を固めた。