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目の前に、突然元夫の健太が現れたので美月がびっくりしていると、


「久しぶり。元気そうだね」


健太はそう言って笑った。

美月はなるべく平静を装うと挨拶を返した。


「久しぶり。あなたも元気そうね」

「買い物?」


美月が頷いて言葉を返そうとした時、甲高い女の声が響く。


「健太さーん」


声と共に一人の女性がこちらへ向かって来た。

その女性を見た美月は一瞬にして全身が強張る。


その女性は健太の不倫相手で、今は健太の恋人の森田愛美だった。


「あら、佐藤さん、偶然ね。お久しぶり」


愛美は少しも悪びれた様子もなく美月にそう言った。

美月は心臓がバクバクして手がかすかに震えていたが、それを悟られないように口を開く。


「こんにちは。ほんと偶然ですね」


すると愛美はちらっと美月の左手の薬指を見てから勝ち誇ったように言った。


「佐藤さんもお買い物? もしかして待ち合わせ中だった?」


それから愛美はわざとらしく左手を口元へ持っていく。

その左手の薬指には、ダイヤモンドのリングがキラキラと輝いていた。

そこで美月は二人が婚約したのだと悟る。


しかしそのダイヤモンドリングを見せつけられても、美月は自分が全く動揺していない事に気付いた。

なぜならそのダイヤの婚約指輪は、美月が貰った物と同じようになんの変哲もない指輪だったからだ。

逆にそのリングを見て滑稽な気持ちになる。おそらくその指輪はまた健太の母親が買ったのだろう。


そこから美月は落ち着いて返答する事が出来た。


「はい。買い物中でしたが急に人と待ち合わせになったので」


二人の会話を聞きながら健太が少し困ったような表情をしていた。きっとこのぶしつけな恋人の態度に冷や冷やしているのだろ

う。五年連れ添った健太の顔を見ればすぐにわかった。


美月の銀行時代の同期で今は健太の恋人である愛美は、当時から気の強い女だった。

銀行のイベントで、当時支店に配属されていた美月と本部にいた7歳年上の健太は知り合った。どちらかというと健太の方が積

極的だった。

しかし同時期に健太に思いを寄せていた愛美がある日美月にこう言った。


「佐藤さんは健太さんと付き合っているの?」


突然喧嘩腰に聞かれたその時の事を、美月は今でも覚えている。

しかしその当時美月と健太はまだ付き合っていなかったので違うと告げると、


「じゃあ私がアタックしてもいいのね」


と吐き捨てるように言って立ち去った。

テレビドラマに出て来そうなセリフを愛美から浴びせられたので、美月はその時相当衝撃を受けた。


結局その後、健太は美月と付き合い結婚した。

健太は愛美の本性を知らないまま、きっと不倫をしていたのだろう。

美月は愛美の本性を知っていたので、健太の不倫相手が愛美だと知ってもあまり驚かなかった。


しかし今の様子からすると、健太は愛美と付き合ううちに愛美の本性を知ってしまったのではないだろうか?

今更気づくのも滑稽だなと美月は思わず笑いそうになる。


すると、愛美がさらに追い打ちをかけるように言った。


「今日は健太さんが誕生日プレゼントを買ってくれるっていうのでこれからショッピングなの。美月さんの待ち合わせの相手は

どなた? 女友達?」


そのあまりにも失礼な物言いに、さすがの健太も口を挟む。


「おい……」


健太はいい加減にしないかといった口調で愛美に言った。


その時美月を呼ぶ声がした。


「美月!」


三人が声の方を振り向くと、ジーンズに白シャツスタイル、そしてサングラスをかけた海斗がゆったりとこちらへ歩いて来る。

健太の恋人の愛美は一瞬海斗に見惚れていたようだ。横にいた健太も近づいて来る海斗の事をじっと見ている。


海斗は美月に近づくと言った。


「ごめん、遅くなって」

「ううん大丈夫。私も今来たところだから」


そこで海斗は健太と愛美をチラリと見て聞いた。


「お知り合い?」


美月はどうやって紹介しようかと戸惑っていると、健太が口を開く。


「はじめまして、私、美月さんと以前結婚をしておりました藤原と申します」


健太は続けて愛美を紹介する。


「彼女は婚約者の愛美です」


海斗は一瞬美月の方を見たがすぐに事情が分かったらしく、サングラスを外して爽やかな笑顔で言った。


「はじめまして、沢田と申します。今美月さんとお付き合いさせてもらっています」


美月は思わずドキッとする。そして、


『そこまで言う必要はないのに』


という視線を海斗に送った。

すると海斗は茶目っ気たっぷりの笑顔で微笑んだ。


健太はサングラスを外した海斗の顔を見て驚いて言った。


「沢田さんって、あの『solid earthの』沢田さんですか?」

「はい」


海斗がニッコリして答えると、愛美が興奮して口を開いた。


「きゃあ! 私、コンサートに何度か行った事がありますぅー!」


それまでの高圧的な態度とは打って変わり媚びた声色で言った。


「ありがとうございます」


海斗は紳士的に返しながらも、その視線はしっかりと愛美の薬指のリングを捉えていた。


美月は恥ずかしさのあまり消えてしまいたかったが、なんとかその場に留まっていた。

そんな美月に気付いた海斗は、二人に向かってこう言った。


「今日はレコーディングの合間でのデートなので、時間があまりなくて。すみませんがこれで失礼させていただきます」


海斗は笑顔で軽く会釈をすると、サングラスを掛け直してから美月と手を繋ぎ裏通りへ向かった。

美月の手を握った海斗の手は、とても力強く頼もしかった。

そんな海斗の手にすがるように、美月は海斗の手をギュッと強く握る。


健太と愛美は、二人が立ち去って行くのをただ茫然と見つめていた。

美月達の姿が見えなくなるまで、その状態は続いた。


その後二人は愛美が欲しがっているジュエリーブランドの店に向かって歩き始める。

これからプレゼントを買ってもらえると言うのに、愛美は信じられないくらい不機嫌だった。


「なんで佐藤さんが沢田海斗の彼女なの? 信じられない!」


と健太に向かって捲し立てる。

健太自身も目の前で見た事実に、ショックを隠し切れなかった。


健太は愛美と恋人関係になってみて、美月がどれだけ賢い女性だったかという事に今更ながら気付いていた。

結婚していた当時は、美月の控えめさとおとなしさが物足りなかった。

それに対し、愛美は積極的で刺激的な女だった。だからつい目移りしてしまった。


正直、今は愛美と結婚する事に不安を感じつつある。

愛美は付き合いが長くなるにつれ徐々に本性を表し、正直その気性の荒さに健太は辟易していた。

そんな時に、元妻が有名スターと交際していると知りかなり動揺している。


自分は間違った選択をしてしまったのかもしれない。

自分の愚かな行為で、本当に大切にすべきものを手放してしまったのではないだろうか?

ここ最近ずっとそんな思いに囚われていたが、今の出来事でそれが確信へと変わった。


やはり自分は間違えてしまったのだ…健太はぼんやりとそう思った。


呆然とする健太の耳には、都会の街中の乾いた喧騒だけが響いていた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

6

ユーザー

海斗さん〜おちゃめ感出しつつのバカップル撃退流石です👏👏👏👏👏👏 美月ちゃん頑張ったね🥰

ユーザー

良かった😁胸がスッとしたわ!さすがですね~!馬鹿男に馬鹿女が阿呆面で幸せそうな2人を見送る🥹(口汚くてごめんなさい😅)最高!

ユーザー

キャァー🤭🩷海斗さんかっこええ〜🩷🩷🩷めっちゃかっこええわ〜🩷🩷🩷もう最高の登場✨👍👍👍 あら〜?愛美さん? ご機嫌ななめ? あなたには隣のクズ太で十分やでぇ😝😝😝

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