テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
次の日になって、チャイムが鳴り響く。朝のHRが終わった合図だった。俺はなんとなく正気を保てていなくて、四六時中ぼーっとしていたと思う。
それでも昨日と変わらず天乃は話しかけてくることはなかった。
「ねーねー、猿山。」
ふと聞こえた、クラスメイトの声。その声はいつも天乃と仲良くしているやつで、結構陽気なやつ。天乃とは結構話が合っていそうで時々楽しそうだなとヤキモチ…を妬いているかもしれない。そいつ以外にも、天乃と仲のいい男子が数名ほど。
「どうしたの?」
俺がそう答えると、「ちょっ、こっち来て。」と小声で連れて行かれる。集団で俺は廊下に連れて行かれ、何がなんだかわからずに少し困惑した。
そうして廊下に出て少し歩いた先で、「ここら辺でいいか。」と呟いてから立ち止まったため、俺も歩みを止めた。
そうすると、相手はひとつ深呼吸してから質問を口にした。
「なぁ、天乃と喧嘩したの?」
「……へ?」
ふとされた鋭い質問に、俺は戸惑ってしまった。いや、まぁバレてもおかしくないか。いつも仲良いやつと急に離れるなんておかしいんだから。
「あー……ま、まぁ、そんなところ…かな?」
喧嘩をしたのは事実だが、なぜかどもった。
「やっぱり?!だと思ったよ!!」
「猿山、様子おかしかったもんな!」
数名の男子が「予想的中!」とでもいうような顔をして興奮気味になっていた。正直、こういう戯れには興味はない。しょうもないし、勝手な憶測で決めつけるのは好きじゃないから。…まぁ、自分に言えたことじゃないけど。そう気付かされたのは、あいつと出会った頃の───・・・って、何言ってんだ。今あいつは関係ないだろ。
そうして、俺がため息を一つついた後に、男子達は口を揃えてこう言った。
「天乃ってめんどくせーもんな!」
「……ぇ?」
息を吐くほどの、小さな困惑の声。
そりゃまぁ…流石にそうだろう。いつも天乃の周りに集って仲良さげに話してるんだから。だからこいつらは当然天乃の友達で───・・・
「天乃のやつ、からかいがいはあるけどなんかあのキャラうざいんだよねー!」
「ほんとそれそれ!!」
「なんであんなやつ好きな人多いんだろうなぁ?」
そう淡々と男子集団は天乃のことを話す。…それでも、このみんなより少し上の頭は混乱してしまう。からかいがいって何?楽しそうに話してたのは?あんなやつって……天乃のこと?
何もかもが嘘に聞こえて仕方がない。
「……ぇ、と、友達じゃないの?」
戸惑いのせいか、それがそのまま声に出る。そんな俺の言葉に、みんなが口を揃えて言った。
「いや、ないない!!(笑)」
流石の予想していなかった回答に、俺は笑顔の口が引き攣る。いや、でも。いや、そんなはず……。だってあいつ、いつもオレに最近仲良くなってきたって話してて……。
しょーもない遊び…かくれんぼとか、鬼ごっことか、ゴミをゴミ箱に投げて入れる遊びとか…楽しそうに話していたあれは?これは?
───頭が混乱して、うまく回らない。その間にも、男子集団はどんどん話を進めていく。
「天乃っていっつもヘラヘラ笑っててさ〜!」
「あぁそれな!遠回しに悪口言っても笑ってばっかだし!」
「あの遊びもさ〜!すぐ許してくれたよな?」
「あーーー!!あれまじ爆笑もんだったわ!!」
ふと聞こえた、”あの遊び”。俺はそれが気になって、つい聞いてしまった。
「あ、あの遊びって?」
俺が聞くと、1人が笑顔で答える。
「え〜?かくれんぼとか!そんときは天乃だけ置いて帰ったりー、鬼ごっこはあいつをずーっと追いかけ回して捕まえたら罰ゲームでー…あいつのゴミを正しい場所に投げ入れたりさ!!」
みんなが、目の前で大笑いする。
「……っ。」
言葉さえも、出なかった。
コメント
2件
すっごい好きだ、、、 続き楽しみです!