コメント
30件
よかったー。 誠実な想いは伝わるものだね٩(ˊᗜˋ*)و さて、明日は杏樹ちゃん、まともに歩けるかな?🤭
おじさまに気に入られてよかったね💖結婚する日も近いかも😆
何はともあれ伯父さんに気に入ってもらえて良かったよね😊
伯父の樋口は驚いた顔をしたまま杏樹に聞いた。
「杏樹、こちらは?」
「えっと……その……」
杏樹はなんと説明していいのかわからず口ごもる。
そんな杏樹に代わり優弥が口を開いた。
「こんな形でお目にかかり大変恐縮です。私、杏樹さんと同じ銀行に勤めております黒崎優弥と申します」
優弥はきちんとお辞儀をしてから樋口に名刺を渡した。
樋口は名刺を見なが言った。
「銀行の副支店長さんですか? 銀行の上司の方がなぜ姪の家に?」
「実は私は杏樹さんと結婚を前提にお付き合いをさせていただいております。本来ならば先にきちんとご挨拶に伺うべきでしたがこんな形でのご挨拶になってしまい大変申し訳ありません」
優弥は再び深々とお辞儀をした。
その時杏樹は心臓がドキドキしていた。
(けっ…結婚を前提?)
今優弥ははっきりとそう言った。聞き間違いかと思ったが確かに優弥はそう言っていた。
優弥の説明を聞き樋口は漸く状況を理解したようだ。
そこで樋口も上着の内ポケットから名刺入れを取り出すと優弥に名刺を渡す。
「樋口と申します。私は杏樹の母親の兄にあたります。ま、立ち話もなんですからどうぞお掛け下さい」
樋口がソファーに腰を下ろしたので優弥も「失礼します」と言ってソファーの向かいにあるオットマンに座った。
そこで樋口が杏樹に言った。
「杏樹、日本茶を一杯くれないか」
「あっ、はい……」
杏樹はキッチンへお茶を淹れに行く。
「そうでしたか……杏樹の……いや、まさか杏樹に交際している人がいるなんて知らなかったものですから……突然訪ねて来て申し訳なかったね」
「いえ、こちらこそ配慮が足らず申し訳ありませんでした」
「いえいいんですよ。それより、結婚を前提にというのは本当ですか?」
「はい、私はそう考えております。まだ彼女には伝えていませんが……」
カウンターの向こうにいた杏樹は「私はまだ聞いていない」といった素振りでうんうんと頷く。
そんな姪を見た樋口は微笑んで言った。
「いやぁ、僕のせいでなんだか黒崎さんの計画を台無しにしてしまったようだなぁ…本当に申し訳ない」
「いえ、お気になさらずに」
そこで杏樹がお茶を持って来て二人の前に置き空いている席に座った。
樋口は今度は杏樹に聞いた。
「お前も黒崎さんの事が好きなんだな?」
「はい、好きです」
杏樹は少し頬を染めて答えると優弥は微笑んだ。
伯父の樋口は満足そうに頷いてからもう一つ質問をした。
「その好きっていうのは結婚したいくらい好きなんだな?」
『結婚』というワードに杏樹はドキッとする。正直優弥とは付き合い始めたばかりなのでそこまで考えた事はない。というよりはそこまで考える余裕がなかったと言った方が正しいのかもしれない。
優弥と再会してからの杏樹は優弥からの愛を受けとめる事で精一杯だった。だからその先を考える余裕などなかった。
今改めて伯父に聞かれたのを機に杏樹は自分の思いに向き合ってみる。
その時杏樹の頭の中には真っ先に昨夜の出来事が思い浮かんだ。それは優弥がプレゼントしてくれた『シーグラス』だ。
優弥が出張先で拾い杏樹の為に持って帰ってくれた『シーグラス』にはその答えが詰まっていた。
(私が言った些細な事を副支店長は覚えていてくれた。そしてそれを見つけてわざわざ持って帰ってくれた。ただのガラスの欠片なのに…でも私はそれが凄く嬉しかったの。つまりはそういう事……)
杏樹はすぐに答えが見つかった。そして伯父にはっきりと伝える。
「はい、私も結婚したいくらい好きです」
杏樹の言葉に優弥がホッと息を吐く。優弥は緊張しながら杏樹の答えを待っていたようだ。
そこで樋口がニッコリと微笑んだ。
「そうか、ならもう何も言う事はないな。黒崎さん、杏樹は私の娘みたいなもんなんですよ。だから杏樹を泣かせるような事だけはしないって約束してくれますか?」
「もちろんです。約束します」
「それなら安心だ。黒崎さん、どうか杏樹の事を末永くよろしくお願いしますよ」
樋口がソファーから立ち上がり右手を出したので優弥も立ち上がり樋口の手をギュッと握る。
そんな二人を見ていた杏樹はとても幸せな気持ちに包まれていった。
その後二人は色々な会話を交わした。
優弥が釣り好きと知った樋口は来月所有しているクルーザーで釣りに行くので優弥にも是非来るようにと言った。。
また優弥の家が隣だと知った樋口はかなり驚いていた。
「銀行にお勤めの方には少しお高い買い物ではないですか?」
そこで優弥は若い頃から投資の経験がある事、そして現在は祖父から相続した資産を運用し給与以外の収入がある事を伝えた。それを聞いた樋口は目を輝かせる。
「そりゃあ凄いなぁ……勤め人なんか辞めていっそのこと投資家になったらいいんじゃないか?」
「それは駄目なの。副支店長は銀行の仕事が好きなんだから」
「そうなんですか?」
「はい……まだ色々と自分の力を試してみたいんです」
「なるほど。まあチャレンジ出来るうちに色々やってみるのもいい事だよ」
樋口は頷きながら笑顔で言った。
そこで優弥は祖父から相続した田舎の土地の有効活用について樋口にアドバイスを求める。
不動産投資には詳しい樋口はその土地の情報を聞いた後優弥に様々なアドバイスをした。
二人はまだまだ話し足りないようだったが、この後樋口には予定があったのでそこで一旦話を終える。
そして樋口は次の約束の場所へと出掛けて行った。
樋口を見送った二人は玄関のドアを閉めてからフーッと息を吐く。
「本当にごめんなさい。父親でもないのに伯父はいつもあれこれ出しゃばるから…」
「いや、それだけ杏樹の事が可愛いんだろう。でも伯父さんは本当に手広くやっているんだね、色々と話が合いそうだよ」
「フフッ、なんか二人とも投資の話で盛り上がっちゃって…私にはさっぱりだわ」
「おや? 仲間外れにして拗ねちゃったかな?」
「拗ねてなんかいませんっ」
「ハハッ、拗ねてるじゃないか。じゃあこれからじっくりとお詫びでもするかな……」
優弥はそう言って杏樹を抱き締める。
「もっ、もう充分っ! これ以上頑張ると明日の仕事に支障をきたしますよ」
「俺は逆に杏樹と離れていると支障をきたすよ」
「駄目っ、駄目ったら……もうおしま……」
そこで杏樹の唇が塞がれ言葉がかき消された。
二人はしばらく長いキスをした後、手を繋ぎながら寝室の中へ消えて行った。