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「ちょっと! 何なの!? あんたたち!!」
「うるせぇな! このアマ!!」
奏が声を張り上げながら瑠衣を連れ去ろうとしている男たちを追い掛けるが、男らは素早く瑠衣を近くに停めてあった黒のバンに強引に押し込む。
「ちょっと! 待ちなさいよ!!」
奏の声も届かず車は急発進し、大通りを出ると左折して猛スピードで走り去っていく。
取り残された奏は、すぐにスマホを取り出し警察に通報した後、恋人の葉山怜の電話番号を表示させ、通話をタップすると、三コール目で彼は電話に出た。
「もしもし!? 怜さん!? 今すぐに響野先生に連絡して!」
『奏? 何かあったのか?』
尋常ではない恋人の声に、怜が問い掛けた。
「瑠衣ちゃんが…………瑠衣ちゃんが…………何者かに連れ去られたの!!」
『何だって!? 警察には通報したのか?』
「速攻で通報したよ! 今警察が来るのを待っているところ! だから……電話切ったらすぐに響野先生に電話して!!」
『わかった』
「多分、警察に事情聴取されると思うから、帰りが遅くなるかも! とにかく響野先生にすぐに連絡して!」
『奏、わかったから落ち着くんだ。俺もすぐに仕事を切り上げて東新宿まで向かうから。その間、侑の家に待機させてもらうんだ。俺も侑に電話する時に、頼んでみるから』
「ありがとう怜さん……!」
奏が怜との電話を終え、瑠衣のスマホに電話をしてみたが、スマホの電源が切られているアナウンスが虚しく流れている。
瑠衣への電話を諦めてから数分後、白い原付が奏の元へ駆け付けた。
そろそろ侑の運転する車が自宅に到着する、という時。
長い黒髪の女性が、警察官と話をしている様子が視界に入ってきた。
(何かあったのか……?)
何気なく女性と警察官の横を減速して車を走らせると、見覚えのある女性だった。
彼女の足元にはトランペットの楽器ケース。
(あの女性…………音羽さんか……?)
侑はそのまま自宅のガレージへ車を停め、スマホを取り出すと、そこには画面いっぱいに表示されている着信履歴の通知。
電話を寄越したのは、先ほど見かけた音羽奏のフィアンセ、友人の葉山怜。
(…………嫌な予感がするな……)
侑はすぐに怜へ連絡を取った。