テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
途中休憩を挟みながら、トリオ版『トランペットラブレター』を数回通し練習をした後、怜と奏がハヤマの創業記念パーティでも披露したT–SQUAREの楽曲『WHEN I THINK OF YOU』を演奏してくれたり、奏が自身のトランペットを出し、瑠衣と二重奏をしている合間に、怜がアルトサックスの個人練習をしたり、六月のコンクールで演奏する『トランペットが吹きたい』を怜に聴いてもらったり……と、音楽三昧の時間を過ごした。
夜の帳が下りる頃、防音室の扉が開き、侑が帰宅した。
「先生、お帰りなさい。お疲れ様です」
「響野先生、こんばんは。お邪魔してます」
「侑、お疲れ。お邪魔してます」
侑は怜を見た瞬間、微かに眉根を寄せる。
「ああ、ただいま。音羽さん、こんばんは。ってか怜。お前仕事はどうした? サボりか?」
「サボりなんて人聞きの悪い事言うなよ。今日は有休だ」
そう答えながらもニヤける怜に、侑が更に眉間に皺を刻ませながら、頬骨まで伸びている長い前髪を掻き上げた。
「…………おい、怜。さっきから何をニヤけているんだ?」
「いや、何でもねぇよ?」
と言いつつ、怜は侑の仏頂面と瑠衣の表情を交互に見やりながら、不敵な笑みを見せつけているが、侑もなぜ怜がニヤけているのか察しがついたのか、
「…………まぁ……そういう事だ」
と顔が熱くなるのを堪えながら、ボソリと言葉を零した。
その後、四人はリビングに移動し、瑠衣がコーヒーを淹れ、それぞれの前にマグカップを置く。
「せっかく来たんだ。晩飯食っていかないか?」
侑が怜と奏に聞くと、最初は遠慮していた二人だったが、
「豊田からここまで来て頂いたので、是非食べていって下さい」
と瑠衣が言うと、二人は『ではお言葉に甘えて頂きます』と答えた。