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瑠衣はコーヒーを飲み終えた後、キッチンへ向かい、キノコとベーコンのチーズリゾット、タマゴスープ、サラダを振る舞う。
ダイニングテーブルで食事を囲みながら、怜が思い出したように会話の口火を切った。
「結婚式と披露宴はまだ未定だが、お前には余興で何か一曲吹いてもらおうと思ってるからよろしくな」
「…………俺で良ければ二人のために演奏させてもらう。日程が決まったら、是非教えてくれ」
「ああ。招待状も送付させてもらうよ。もちろん、九條さんも一緒に」
男性陣が結婚式の話をしている間、瑠衣と奏は料理の話をしている。
「瑠衣ちゃんって料理上手だよね? 学生時代とか家でも作ってた?」
「自分で作り始めたのは、先生の家に住まわせてもらってからだよ。私も元は料理とか全然してなかったし、料理のレシピサイトで検索して、自分でも作れそうな物を作ったりしてる感じかな……」
「そうなんだ。私も料理頑張らないと……」
そう言いながら唇に笑みを滲ませる奏が可愛いな、と瑠衣は思う。
侑と想いを通わせるまでは、羨望と嫉妬に取り乱し、醜い感情を抱いている事に自己嫌悪に陥ったが、今は怜と奏カップルが素敵だ。
夜も二十一時を過ぎ、怜と奏が楽器ケースをそれぞれ持って玄関先へ向かう。
「こんな遅い時間までお邪魔して、夕食までご馳走になり、ありがとうございました」
「侑、九條さん、ご馳走様でした。お邪魔しました」
「ああ、また来いよ。帰り、気を付けてな」
「葉山さん、奏ちゃん、気を付けてお帰り下さいね。また練習しましょうね」
侑と瑠衣が手を振って見送ると、怜と奏は手を振った後、さり気なく手を繋いで自宅を後にした。
***
「…………人目も憚らずに手を繋いで、あのカップルは本当に仲がいいな」
「ラブラブですよね、あのお二人」
侑が困ったように笑みを浮かべ、瑠衣の肩を抱き寄せると、彼女がビクッと身体を震わせた。
「…………なぁ瑠衣」
彼から呼ばれて見上げると、口角の片側だけを吊り上げる笑みを映し出している。
一重の鋭い瞳の奥に、色が滲んで見えて、瑠衣の心臓が大きく打ち鳴らされた。
「…………一緒に風呂に入るか」
侑が射抜く眼差しに捉えられ、彼女がコクリと頷いた。