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(そういえば、圭にも同じような事を言われたな。双子故に、考えている事もシンクロしているのか……?)
怜の言葉を聞きながら、侑は朧気に考える。
隣にいる弟子の瑠衣と一緒にいると、どこかホッとする。
仕事から帰った時、彼女が笑みを浮かべながら『先生、お帰りなさい』と言ってくれる事が嬉しくもあり、鼓動が大きく跳ねる事があるのも事実。
(俺の思い違いだったら、恥ずかしいが……)
恐らくだが、瑠衣は侑に好意を寄せてくれている、と思う言動が、度々瑠衣の口から飛び出す事があった。
娼館の火災で、行く所がなくなった瑠衣は、おずおずと
『一人じゃ怖い…………から……先生と…………一緒に……寝た……い……』
と言った事や、自身の黒歴史を打ち明け、彼女を抱いた時、
『もう……私を…………レナさんの……当て付けで…………抱かないで……。先生に……抱かれるのなら…………九條瑠衣として……抱かれ……た……い……』
『せん……せ……私を抱くの……なら…………九條瑠衣として…………抱いてっ……!』
と、自分自身だけを見て欲しい、とも受け取れる事を言ったのだ。
それに、瑠衣は甘えたがりの部分もあり、甘えられるのが苦手な侑にとって、それすらも可愛いと感じてしまう。
あの娼館で彼女と再会した時から一目惚れしたと自覚し、彼女に対して愛おしさすら感じるようになったのは……あの同伴した日だ。
(かつての恋人は、他の男を部屋に連れ込んでセックスしていて、俺はあの女を売女と罵り、即別れた。だが、今の俺は…………その売女だった女に……)
人の気持ちなんて、どこでどうなるものか本当に分からない。
瑠衣と再会して、侑は痛感する。
——まさか、娼婦だった弟子の女に、こんな慕情を抱くなんて。
(そろそろ、彼女に対する俺の想いに……真剣に向き合う時が来たのかもしれんな……)
友人カップルの写真を見つめながら、侑は様々な想いを巡らせ続けていた。
「……う? おい、侑」
怜に声を掛けられ、侑が我に返ってハッとする。
「あ……ああ、すまん。ちょっとボーっとしていた」
「まぁとりあえず座れよ。九條さんも、どうぞ座って下さい」
「はい。失礼します」
その後、四人は奏が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、怜と奏の馴れ初め話や吹奏楽の事、音楽の事を沢山話した。