「ただいま」
儀式に戻ると、ローリーが焚き火を焚いてくれていた。
「お帰りなさい。コーヒー用意してあるから飲んで?」
「ありがとう…」
「もうへとへとだよぉ~」
「トリックスター、ゲートのスイッチを入れてくれてありがとう」
私はそういった。
「まぁ…そうね。あんたのおかげで全員生存できたんだし…」
「ありがとう、トリックスター!」
みんなが彼にお礼を言う。
その事に嬉しかったのか、彼は顔を赤らめながら下を向いた。
「あら、随分仲良くなってるみたいね」
「ちがう!そんなことない!」
「まぁフェンミン落ち着いて…これもチームワークのおかげさ。」
「ドワイト…まぁそうね」
「はい、コーヒー。人数分あるから。ドワイト、みんなに渡して?」
「お安いご用だよ。」
ドワイトがコーヒーを配ってくれた。
「僕コーヒー苦手なんだけどな…」
「あらそう。じゃあガラスの破片を飲むのはどうかしら?」
「コーヒー大好き美味しい。」
ローリーの冗談とトリックスターの反応にみんなが笑った。
もちろん私も。
こんな時間がずっと続けばいいのに…。
「今日の儀式は一回だけなのかしら。」
「さぁ?もしかするとまた儀式かも」
「えっ!儀式って何回もあるの?」
トリックスターが聞いた。
「朝日が昇るまでずっとするときもあれば、逆に昨日みたいに一日もない時があるわ。今日はどっちか分からないけど…」
私が彼の問いに答えると、みんなが次々に言い始めた。
「本当にキラーって気まぐれよね。たまにバグでスキチェが理不尽すぎる時があるし…」
「キャンプは嫌だなぁ…見られながら結局殺されるのが一番悔しい。」
「ワンパンで殺しに来るのもムカつくわ。」
「えっ、えっ」
「嗚呼、トリックスターは気にしないで?ただの愚痴だから。」
ミンがそう言う。
「完全に僕らキラーの事皮肉ってるよね?」
「今のあんたはサバイバーなんだからいいじゃない」
「コーヒーおかわりあるけど飲む?」
「いらない」
トリックスターをからかい、近況報告等をしたり、様々な話をした。
「─トリックスターはどう思う?私達サバイバーの事を知って。」
私はそう彼に聞いた。
トリックスターは少し間を置いて話し出した。
「え、僕?僕は…うん。本当に凄いなって…
失礼だけど、僕は君たちの事を結構バカにしていたんだ…でも本当に君たちのチームワークに感動した。
キラーだった僕は全く功績を残せなくて他のキラーにバカにされるし殺されかけるし、一人だけ孤立してたんだ…。
だから初めはサバイバーになってもどうせ一人ぼっちで邪神の怒りを買うだけなんだって…でも違った。
僕が負傷してフックに吊るされそうになったとき、誰も僕を見捨てなかった。
フェンミンちゃんは懐中電灯で目眩ましをしてくれたし、ドワイト君は傷を治してくれた。
そして君。僕が発電機を何度も爆発してしまっても笑って許してくれて…あの時君が僕の背中を押して時間稼ぎをしてくれなかったらきっと今頃僕は処刑されてた。
本当に君たちには感謝しかない。
ありがとう。」
あのトリックスターが私たちに頭を下げた光景にみんなが口を開いて放心した。
「…なんか…」
「そこまで言われるとむず痒いわね…」
「そうね…」
「ひとまずもう寝ましょうか。」
私がそう言うと全員が頷き、フェンミン達は先に小屋へ行った。
私も三人の後を追おうとした時…
「ま、待って!!」
トリックスターに呼び止められた。