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「なに?」
トリックスターに呼び止められ、私は後ろを振り向いた。
「あのぅ…」
もじもじとシャツの裾を掴みながら話す彼。
「うん。」
彼が話し出すまでにそう時間は掛からなかった。
「あ、あの…さ!今日は本当にありがとう!僕のために逃がしてくれて…」
「別にいいわよ。今のあなたは私達と同じサバイバーなんだし。チームワークは当然よ」
そういい、トリックスターの肩をポンと叩いた。
「僕、足引っ張ってばっかりで情けなかったよね…」
「初めてにしては上出来だったわよ。そんなに自分を責めないで?私があなたを逃がした意味がなくなるわ。」
「そ、そうだよね…!ごめんね?」
なんか新鮮だな…あのファンサばっかりで目立ちたがりのトリックスターにもこんな一面があるなんて。
そういえばキラーの時も孤立してたって言ってたな…頼れる人がいないのは結構ツラいよね。
「もういいわよ。まだサバイバーであるかぎりは、いつでも頼っていいからね?」
「ほ、本当?」
「ええ、もちろん。仲間なら当然よ。」
それじゃ、と私は手を振って小屋に戻ろうとした時…
「待って!!」
ガバッと、突然トリックスターが私を抱き締めた。
「え…と、トリックスター?」
いきなりの事に私は動揺してしまった。
「ねぇ、一つ質問いい?」
彼の声と吐息が耳元に当たってくすぐったい。
「っ…なに?」
「君の事をさ…もしも好きって言ったら…どうする?」
「え?」
それはつまり…トリックスターは私の事を異性として好いているってこと?
何で?どうして?
今までキラーとサバイバーっていうただそれだけだったのに…。
彼がサバイバーになっても、深く考えずにみんなと同じ様に接しただけだよ?私…。
特に彼が私を気にする所なんてない…。
「や、やっぱり変だよね…!キラーである僕がサバイバーの君を…気にかけるなんて…。ごめんね?忘れて!」
「う…うん…」
彼の精一杯の笑顔を見て、私はフラフラと小屋に戻った。
「忘れられるわけないのに…」
ベッドに横たわりながらそう言った。
深く考えずに別の事を考えようとしたが、結局脳裏から現れるのは彼の先ほどの一言。
もしも私が彼の告白に頷けば、キラーとサバイバーという壁もなくなる…。
「どうしたらいいの…?」
私はベッドの毛布に潜りながら目を閉じた。