TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


夕食を囲みながら、侑が思い出したように遠くへと視線を向けた後、徐にジーンズのポケットから一枚のチラシを取り出し、テーブルの上に広げた。


「お前も大分、ラッパを吹く感覚を取り戻してきたようだし、コンクールとか舞台に上がってみないか?」


「えぇ!? いきなり過ぎません?」


瑠衣はテーブルの上に置かれたチラシを手に取り、凝視している。


侑がハヤマの銀座旗艦店に行った時に見つけた、日本トランペット指導者協会が主催するコンクールのチラシだ。


日程を見ると、六月の中旬に開催されるらしい。


課題曲は無しの自由曲だけのコンクールで、チラシに書いてある内容を見ると、主に初級から中級者、ブランクがある人向けのコンクールのようだった。


「目標がある方が、練習にも張り合いが出るというものだ。ただ、やはりこういうコンクールだと、ピアノの伴奏者が必要になってくるが、お前の知り合いでピアノを弾ける人はいるか?」


「いえ、いません。音大時代も、試験でピアノの伴奏を頼む事はありましたけど、試験が終わればそれっきりだし、ピアノ科で仲のいい人とかいなかったし」


「…………そうか。なら、俺の方で何人か声を掛けてみるとしよう。気軽、と言ったら語弊があるが、気負わずに参加してみたらいい」


「わかりました。ありがとうございます」




(うわぁ…………コンクールだって……!)


何年か振りにエントリーするコンクールに、瑠衣の胸が高鳴っていくのがわかる。


そのせいか、夕食がなかなか進まない。


お腹いっぱい、胸いっぱい、と言ったところか。


「初級者から中級者向けのコンクールやコンテスト、もっと増えたらいいよな。やはり、どこかで練習の成果を発揮できる場所があった方が、更に上達もするだろうしな」


侑の穏やかな眼差しが瑠衣に注がれる。


「私も……そう思います」


瑠衣は彼に見つめられているのが恥ずかしいのか、俯き加減で黙々と食事をし続けた。

もう一度、きかせて……

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

30

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚