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「…………おお、そうか。いや、凄く助かる。忙しい所、悪いな。…………え? お前の知り合いでいるのか? なら尚更だな。…………ああ、明後日の土曜日は空いてる。…………分かった。なら、弟子も連れて行く。…………立川の北口にある大きなホテルな。了解。…………十三時くらいで大丈夫か?…………分かった。なら明後日な」
侑が誰かと電話をしていたのか、終始笑顔を見せながら会話をしていた。
「九條。友人から連絡が来て、俺とお前の楽器の調整が終わったそうだ。それから、そいつの知り合いで、ピアノ講師をしている人がいて紹介してくれるそうだ」
思いもしなかった知らせに、瑠衣は目を丸くさせる。
「うわぁ、何か展開が早くないですか? ちょっとビックリしてます」
「明後日、そいつとピアノ講師の方と立川で十三時に会う事になったから、よろしく頼む」
「わっ……分かりました……」
侑の言葉に、瑠衣は尻込みしている。
というのも、彼女は初対面の人と話すのが苦手なのだ。
(いくら先生の友人といっても、私、黙ったまま話を聞いてるだけで終わっちゃいそう……)
大学時代も、実技試験で伴奏者を探す時は苦労した。
何とか苦労して見つけるも、練習の合間に雑談とかする事もなく、ただソリストと伴奏者だけの関係で終わってしまう。
(でも、せっかく先生が探してくれたし……)
思わずため息が零れてしまった。
「…………條。おい、九條」
瑠衣が思考の迷宮に嵌っていると、隣で侑が声を掛けている事に気付き、我に返った。
「とりあえず明後日だ。忘れるなよ?」
「分かってます」
「ならいいが」
(ああ……何か明後日が憂鬱だなぁ。無事に終わればいいんだけど……)
土曜日の顔合わせが無事に済む事を祈るしかできない瑠衣だった。