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お風呂上がり太宰の大きすぎるシャツをワンピースのように着せられた中也は慣れない環境のせいかなかなか寝付こうとしなかった
「……だざ、どこ?」
「ここにいるよ。そんなに不安そうな顔をしないで」
太宰がベッドに入ると中也は待ってましたと云わんばかりに短い手足でパタパタと寄ってきた
そして太宰の腕の隙間にすっぽりと収まり、その胸板に小さく額をくっつける
「ここ…とくん、ていってる」
「それは鼓動だよ。生きてる証拠さ」
「とくん………だざ、いきてる…」
中也は満足そうに目を細め太宰の寝衣の裾をぎゅっと握りしめた
太宰はそのあまりにも無防備な姿を見下ろし、皮肉な笑みを浮かべる
(普段ならこれくらいの距離近づけば殴られるっていうのにね)
記憶を失った中也にとって太宰はこの世界のすべてだ
太宰が手を動かせばその先を目で追い、太宰が名前を呼べば花が綻ぶように笑う
その純粋な依存が太宰の心に暗く甘い愉悦を刻んでいく
「ねぇ中也、君は今私のことが好きかい?」
「しゅき。だざ、しゅき」
迷いのない答え
太宰はその声を聞いた瞬間喉の奥が焼けるような渇きを覚えた
彼は中也の腰を引き寄せ、さらに密着させる
細い首筋に鼻先を寄せると石鹸の香りと中也自身の体温が混ざり合った甘ったるい匂いが鼻孔をついた
「……嘘つき。戻ったら忘れるくせに」
太宰の指が中也のうなじをゆっくりとなぞる
中也はくすぐったそうに身をよじり太宰の首筋に顔を埋めた
そのままふにふにと柔らかい唇が太宰の喉仏に触れる
「っ………」
「たざ、あったかい…ねんね、する…」
すうすうと規則正しい寝息が聞こえ始める
中也は完全に眠りについた
だが太宰の目は冴え渡っている
腕の中にいるのは確かに中也だ
けれど自分の知っているあの不遜で誇り高い相棒ではない
(いっそこのまま戻らなければいいのに)
そんな恐ろしい思考が頭をよぎる
ずっとこのまま自分の腕の中でなにも知らずに自分だけを愛していれば良い
太宰は眠る中也の耳元に唇を寄せ、小さな声でささやいた
「愛しているよ中也。………君が絶望するほどにね」
太宰は中也を抱きしめる力を強め、その小さな額に独占の印を刻むように深く長く唇を押し当てた
🌟🎈(nrkr)/宇宙
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