テラーノベル
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夕暮れ時の放課後、理科準備室の窓から差し込む斜光は、埃のダンスを黄金色に染め上げていた。高校三年生の春、僕と陽葵(ひまり)は卒業を数日後に控えていた。進路希望調査票を握りしめた僕の隣で、彼女は窓の外を眺めながら、不意に切なげな横顔を見せる。
「ねえ、奏多。私たち、離れ離れになってもずっと友達だよね?」
陽葵の言葉に、心臓が跳ねた。胸の奥まで出かかっていた「好きだ」という独白が、喉の途中で固まって、苦い塊となって飲み込まれる。彼女が進学するのは、ここから新幹線で数時間もかかる遠い街の大学だ。地元の国立大学に残る僕とは、住む世界が分かれてしまう。
「当たり前だろ。たまには連絡しろよ」
僕は精一杯の強がりを口にした。本当は、その細い肩を抱き寄せて、行かないでほしいと叫びたかった。しかし、彼女の瞳に宿る未来への希望を奪う権利は僕にはない。結局、一番大切な感情を言葉に変換できないまま、チャイムの音が残酷に会話を打ち切った。
コメント
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え、おまえこんなにまともな小説書けたんか!いいぞ、そのまま続けろ