テラーノベル
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彼女が旅立ってから一年、僕は大学の講義中も、ふとした瞬間に陽葵の面影を探していた。キャンパスに咲く桜の木の下を通るたび、風に吹かれて髪をかき上げる彼女の仕草が脳裏をよぎる。あの時、彼女が使っていた石鹸の香りが鼻腔をくすぐったような気がして振り返るが、そこにいるのは見知らぬ誰かだ。
夜、手元にあるスマートフォンの画面を見つめる。メッセージを送ろうとしては消し、電話をかけようとしては指を止める。SNSで更新される彼女の近況。そこには、僕の知らない街の風景と、僕の知らない友人たちに囲まれて笑う陽葵がいた。
「もう、あいつの隣に俺の居場所はないんだな……」
一人暮らしの狭い部屋で、僕は天井を見上げた。記憶の中の彼女はいつまでも鮮やかで、時間が経つほどにその色彩は増していく。思い出は、美しければ美しいほど、今の僕を深く突き放していった。
コメント
6件
アンタこう言うのも書けんだな...
突き放されてて草 そうだ、おまえはもう過去の男なんだよ